2023-10

2023・10・15(日)びわ湖ホール モーツァルト:「フィガロの結婚」

     滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール  2時

 「オペラへの招待」シリーズのひとつ。ダブルキャストによる全6回公演の、今日は第5日。新芸術監督の阪哲朗が指揮、松本重孝が演出、乃村健一が舞台美術を担当している。

 今日の配役と演奏は、平野和(フィガロ)、山岸裕梨(スザンナ)、市川敏雄(アルマヴィーヴァ伯爵)、船越亜弥(伯爵夫人)、山内由香(ケルビーノ)、林隆史(ドン・バルトロ)、増田早織(マルチェリーナ)、有本康人(ドン・バジリオ)、佐々木真衣(バルバリーナ)、奥本凱哉(ドン・クルツィオ)、西田昂平(アントニオ)。びわ湖ホール声楽アンサンブル、日本センチュリー交響楽団。

 重厚なオペラや重厚な交響曲に浸り続けたあとに聴くモーツァルトの音楽が、なんと伸びやかで明快で美しいこと。こういう解放感に浸れるのも、演奏会通いの醍醐味というものだろう。
 もちろんこれは、阪哲朗の見事な指揮のせいもある。今日は特に、モーツァルトの円熟期の作品の特徴のひとつでもある、管楽器群の和声の美しさが浮き彫りにされた演奏が聴かれ、このオペラの魅力的な管弦楽法が十全に再現されていた。漸く日本でその真価を発揮しはじめた阪哲朗の指揮の良さが、今日も充分に示されていたと言ってもいいだろう。

 序曲や第1幕ではオーケストラが何故か粗く、また声楽陣の方も重唱やアンサンブルの調和が今一つ、という印象があったが、休憩を挟んで第3幕・第4幕に至るや、全てが一変した。
 たとえば第4幕のフィナーレ、ケルビーノとフィガロを追い払った伯爵がおもむろにスザンナ(実は伯爵夫人の変装)を口説きにかかる場面、オーケストラが突然Con un poco piu di motoとなり、第1ヴァイオリンが軽快で幅広い旋律を奏し、第2ヴァイオリンがその下で柔らかく波打つ個所での表情の豊かさ。あるいはそのあと、全員が「お許しを!」と繰り返し、伯爵が「ならぬ!」と突っぱねる個所での、ヴァイオリン群の表情に富んだ起伏。
 こういうところで聴かせた阪哲朗の指揮と日本センチュリー響のふくよかな演奏は、実に魅力的なものだった。

 歌手陣では、やはりフィガロ役の平野和の闊達で爽快な歌唱と演技が素晴らしい。彼のオペラは、今年は「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の夜警(☞2023年3月2日5日)と、「ドン・ジョヴァンニ」のレポレッロ(☞2023年7月17日)を聴いて来たが、その表現力の幅広さには感心する。
 また、伯爵夫人役の船越亜弥は、第2幕のカヴァティーナよりも、後半で調子を上げ、第3幕のアリアで本領を発揮していた。その他の人びとも、みんなそれぞれに安定していたが、ただ、重唱やアンサンブルの部分ではもう一つ緊密さが欲しかったところだ。

 松本重孝の演出も、演技は結構微細にわたっていて、芝居としての面白さは出ていただろう。権力を振り回す支配階級と市民との激突━━といったような演出路線ではないけれども、今回のような上演の場合は、これで充分だ。

 演奏が大詰めのAllegro assaiに入って盛り上がりはじめた時、音楽に合わせて手拍子を取りはじめた客がいたのには驚いた。幸い、あの日生劇場の「フィデリオ」(☞2013年11月24日)の時の手拍子オヤジと違い、リズムはある程度までは合っていたけれども‥‥。

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中