2023-10

2023・10・16(月)パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

       サントリーホール  7時

 秋の来日オーケストラ・ラッシュがいよいよ本格化。大物のひとつ、P・ヤルヴィとトーンハレ管の演奏を聴く。
 プログラムはベートーヴェンの「献堂式」序曲、ショパンの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストはブルース・リウ)、ブラームスの「交響曲第1番」。
 なおアンコールでは、リウはショパンの「子犬のワルツ」を、オーケストラはブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」を演奏した。

 満席の盛況だが、ブルース・リウを目当てに聴きに来たお客さんも多かったのだろう。「ピアノ協奏曲」の終結では、リウが弾き終わった瞬間、オーケストラが未だ鳴っているにもかかわらず、客席のほとんど全部の場所から猛烈な拍手が沸き起こってしまった。こういうことはしかし、ショパン・コンクールならいざ知らず、遠来のオーケストラの演奏会の場合は、オケに対しては甚だ礼を失したマナーと言わざるを得まい。

 そのリウのショパンだが、敢えて言えばスタッカートのショパン━━とでもいうか、リズム感の明快な、影のない開放的なピアノの音色が印象に残る。もう少しふくよかさとか、余情とかいったものが欲しいところだが、これが今のショパン・コンクールを制圧するスタイルなのだというのであれば、それはそれで致し方ないのかもしれない。
 ただ、今日の演奏の場合、パーヴォの指揮というのは、ショパンのコンチェルトには必ずしも相性がいいとは言えないような気がするのだが、如何だろうか。

 チューリッヒ・トーンハレ管の方は、かつてのジンマン時代の音とは全く異なる、パーヴォの音に染められたオーケストラになって登場した。序曲にも交響曲にも、パーヴォの個性が強く沁み込んだ演奏が聴かれる。
 楽器のバランスなどに、時たま作為的なものが現れるのはパーヴォのスタイルだが、交響曲の冒頭で、精微に交錯する弦と管の主題が、異様な強音で叩かれるティンパニによってほとんど聞こえなくなってしまうような演奏構築には、どうも賛意を表しかねる。
 もっともそれ以降の個所ではティンパニはあまり暴れなかったので、ブラームスの管弦楽法と、叙情美と、昂揚感が率直に伝わって来ていた。

 「献堂式」は、演奏には至難の曲だ。どんな指揮者が手がけても、晩年のベートーヴェンの恐るべきエネルギーを巧く再現できた演奏にはなかなか到達できない。それを完璧に実現した演奏はただひとつ、レコードに入っているトスカニーニとNBC交響楽団だけであろう。

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