2023-10

2023・10・17(火)セバスティアン・ヴァイグレ指揮読売日本交響楽団

      サントリーホール  7時

 前半にヒンデミットの「主題と変奏《4つの気質》」を、後半にハンス・アイスラーの「ドイツ交響曲」の日本初演を置くという、渋いけれども大胆なプログラム。
 特にこのハンス・アイスラー(1898~1962)の、声楽入りの1時間に及ぶ長さの「ドイツ交響曲」(1935年~1958年作曲)は、これが日本初演であり、今日の白眉ともいうべきものであった。

 ドイツ交響曲と言っても、作曲された時代から想像がつく通り、ドイツを賛美する音楽ではなく、ブレヒトの詩を主たる題材として、ナチスに虐げられたドイツの民衆、悲惨なドイツを描き出した作品だ。
 軍隊への呪詛、強制収容所の人々への激励、デモ指導者の葬送の行進、農民や労働者の歌など━━アイスラーは共産党員で、アメリカに亡命ののち、東独に戻った人である━━が織り込まれ、11の楽章からなる音楽にも、怒りに満ちているような、激烈な曲想が多い。「警察がデモを叩き潰した」と歌われたあとのオーケストラが突然中断するあたりの、聴き手を慄然とさせるような音楽の構成など、彼の劇的感覚の良さを思わせる。

 声楽のソリストには、アンナ・ガブラー(S)、クリスタ・マイヤー(Ms)、ディートリヒ・ヘンシェル(Br)、ファルク・シュトルックマン(Bs)という錚々たる顔ぶれが揃い、新国立劇場合唱団も出演したが、この豪華な声楽陣が作品の持つ魔性を充分に再現するのに与っていたことは言うまでもなかろう。
 戦争が身近に迫っているような今日の時代に、新たな意味を問いかけて来る作品の日本初演は、大いに意義のあることだと思われる。

 ヒンデミットの「4つの気質」は、弦楽とピアノのための30分ほどの作品で、ピアノ・ソロはルーカス・ゲニューシャスが弾いた。美しさはあったものの、ヒンデミットの音楽は、ごく一部を除いて、私にはどうも合わない。この曲も然りだ。ゲニューシャスはアンコールとして、ゴドゥフスキの「懐かしきウィーン」を弾いた。

コンサートマスターは長原幸太。

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