2023-11

2023・11・5(日)ボローニャ歌劇場 ベルリーニ「ノルマ」

       東京文化会館大ホール  3時

 ボローニャ歌劇場の現在の音楽監督は、あのバイロイトで「さまよえるオランダ人」を指揮したことで話題になった女性指揮者、オクサーナ・リーニフである。その彼女が指揮する「トスカ」と、ファブリツィオ・マリア・カルミナーティが指揮する「ノルマ」とが、今回の引越来日公演のプログラムだ。
 今日は4回の東京公演の最終日、「ノルマ」である。このあと7日から12日までの間に、高崎・名古屋・岡山・びわ湖・大阪での公演がある。

 ところでこのカルミナーティという指揮者、ベテランらしいが、所謂昔タイプのおっとりした指揮で、雰囲気はあるけれども、引き締まった劇的な緊迫感という点では甚だ物足りない。第2幕後半など、音楽がさっぱり高潮しないのだ。ノルマが激怒して一同を扇動する個所で銅鑼が3回鳴らず、中途半端な総休止になってしまっていたのは事故か意図的なものか(それとも版?)判らないが、いずれにしても迫力を欠くもとになったのは確かである。

 ステファニア・ボンファデッリの演出にも似たようなことが言えるだろう。舞台装置はなく、照明の変化と幕の動きと僅かなスモークとでドラマを語って行く手法だが、群衆の動きに表情が不足するなど腑に落ちぬところがあり、特に第2幕後半のドラマが急展開するはずの個所など、もどかしいほどの舞台にとどまった。

 最後はノルマがポリオーネを刺殺し、返す短剣で自らをも刺すという設定に変えられていたが、この場面などももっと凄味が欲しいところだ。
 ノルマとアダルジーザのあの素晴らしい「友情の二重唱」で背後に要らざるチャンバラの場面を入れたり、2人を左右に大きく分けたりして音楽への注意力を削ぐなどの手法は、元ソプラノ歌手がやる演出とは思えないようなやり方である。

 という訳で、指揮と演出に対しては辛辣なことを言わせていただいたけれども、歌唱面は実に好かった。
 題名役のフランチェスカ・ドットはやや細身の歌唱だったが、所謂神秘的で猛女的な巫女というイメージのない、どちらかと言えば可憐さの残るノルマ像ということで、これはこれでひとつのあり方だろう。
 ポリオーネ役のラモン・ヴァルガスは相変わらずの泰平な演技で、声も昔ほどの明るさはなく、ローマ軍司令官としてのカッコ良さには不足するけれども、安定感はある。

 最大のヒットは、アダルジーザを歌った脇園彩である。伸びやかで張りのある声による輝かしい歌唱と表情豊かな演技とで、役柄の上で僅かに控えめな存在を保ちながらも、ドット相手に一歩も譲らず正面から渡り合ったのは見事だった。
 その他、オロヴェーゾのアンドレア・コンチェッティ、クロティルデのベネデッタ・マッツェット、フラヴィオのパオロ・アントニェッティといった人々も安心して聴けた。

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