2023-11

2023・11・14(火)河村尚子&アレクサンドル・メルニコフ

       東京芸術劇場 コンサートホール  7時

  第1部は連弾で、シューベルトの「幻想曲ヘ短調」とドビュッシーの「海」(作曲者による4手版編曲)。第2部は2台のピアノによる演奏でラフマニノフの「交響的舞曲」。シューベルトとラフマニノフでは河村が「第2」を受け持っていた。

 いずれも本当に見事なピアノ・デュオだった。ピアノ・デュオというものの良さ、快さを久しぶりに味わった気がする。
 河村とメルニコフは、シューベルトの「幻想曲」では、シューベルト最後期の哀愁の情感を、これ以上はないほどに深々とした演奏で聴かせてくれた。あのハンガリー風の主題が、何と憂愁に満ちて聞こえたことか。

 「海」は、さすが作曲者自身の編曲による強さというべきか、バランスの良い編曲で、管弦楽版に勝るとも劣らぬ精妙な響きを持っている。
 以前、アンドレ・カプレが編曲した版を永井幸枝とダグ・アシャツの演奏によるBISのCDで聴いたことがあったが、あれは随分華やかな編曲で、面白いけれども原曲のイメージとは全然違うな、と思ったものだった。今回のドビュッシー版を聴いて、なるほどと感心した次第である。充実の演奏だった。

 ラフマニノフの「交響的舞曲」は、前述の通り2台のピアノで演奏された。ただ、それなりの意図はあったのだろうが━━メルニコフが弾く下手側の第1ピアノには蓋が付いており、正規の角度に開いたままになっているので、河村が弾く上手側の第2ピアノ(当然蓋は外されている)とのバランスがどうもよくないのが気になった。
 なんせメルニコフが猛烈に叩くので、彼の大音響の方が目立ってしまう。まるで、大暴れする彼の音を河村尚子が優しくあたたかく受け止める、といった雰囲気だ。もちろん演奏そのものは素晴らしかったけれど。

 アンコールでは、再び連弾(河村が「第1」)で、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」から「美女と野獣」が弾かれた。彼女が短いスピーチをやり、その曲名をすこぶる意味ありげにアナウンスした時には、客席の一部から軽い笑いが起こったのだが、シンとしていた大半の人々は「生真面目な」お客さんであろう。

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