2023-11

2023・11・18(土)井上道義指揮読響「復活」

     東京芸術劇場コンサートホール  2時

 「引退」まであと1年(という)井上道義が、マーラーの「交響曲第2番《復活》」を指揮。読売日本交響楽団(コンサートマスターは長原幸太)、ソプラノ・ソロが高橋絵里、メゾ・ソプラノが林眞暎、合唱が新国立劇場合唱団。

 「井上道義、最後の《復活》」だとか宣伝文句には入っていたようだが━━。
 いろいろ病を体験したとはいえ、とても77歳とは思えぬようなしなやかな身のこなしを見せて指揮する道義サンのことだから、引退宣言はしたものの、いざとなるとまた「現役1年延長」などということになるのではないか、と私などは思っているのだが、プログラム冊子に載った彼のコメントには、「俺はまじめな話、・・・・なれの果てのヨレヨレじじいをこれ以上経験したくないので引退しますが、今回の復活は道義のことではないので皆さん誤解なさらないように」とある。「安易に復活復活と言うなかれ。有り得ない出来事なのだから」とも宣うておられた。

 とにかくまあ、1年後にはまたどうなるか。かのロリン・マゼールのように、「50歳になったら引退する」が「60になったら」に変わり、結局生涯現役のままで通してしまった、という例もあるし。

 それはともかく、大ホールをいっぱいに埋め尽くした聴衆の前で彼が指揮した「復活」は、徒に興奮昂揚を重ねるといったタイプの音楽ではなく、一つ一つの音符を大切に演奏し、音楽を心から慈しむ、というもののように、私には感じられた。
 特に第1楽章など、かなり遅いテンポで、マーラーの音の意味をじっくりと考えながら歩を進めて行く、という姿勢を思わせたのである。

 最終楽章での高潮も見事で、入魂の演奏を感じさせたのは事実だったが、それも体当たり的な熱狂ではなく、一種の感慨をもって「復活」を歌い上げて行くという感を抱かせられた。もちろんこれは私の印象に過ぎない。
 もし彼がこの《復活》を指揮するのはこれが最後と決めているのなら、一種の涅槃の境地にも近い解釈にもなるのかな、などと勝手に思いをめぐらせていたゆえの印象だったのかもしれないが。

 読響も重量感たっぷりの響きでマーラーを表出していた。冒頭のコントラバス群の唸りからしてただごとではないような感がしたほどである。
 なお、メゾ・ソプラノのソロに当初予定されていた池田香織さんは体調不良の由で降板とか。早い復活を祈りたい。

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