2023-12

2023・12・5(火)シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団

     サントリーホール  7時

 前常任指揮者・現桂冠指揮者のシルヴァン・カンブルランが登場。
 11月30日の「名曲シリーズ」ではモーツァルトやドヴォルジャークの作品と一緒に武満徹やシチェドリンの作品を指揮していたが、今日の12月定期では、ヤナーチェクの「バラード《ヴァイオリン弾きの子供》」と序曲「嫉妬」、リゲティの「ピアノ協奏曲」、ルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」という、すこぶる意欲的なプログラムを指揮した。
 その上、協奏曲ではピエール=ロラン・エマールがソリストを務めるという豪華キャスト。コンサートマスターは日下紗矢子。

 1曲目と3曲目にそれぞれ置かれたヤナーチェクの作品は、「ヴァイオリン弾きの子供」のほうは━━美しいソロを弾いてくれた日下さんには悪いけれども━━綺麗な曲ではあるが、それほど面白いとは言えないものだった。やはり「嫉妬」の方が、この作曲家の美点のひとつである鮮烈な感性がより強く表出され、劇的な力にあふれた作品に感じられてしまう。

 この「嫉妬」が当初の案通りにオペラ「イェヌーファ」の序曲か前奏曲として使われていたらどんな効果を生んだであろう、と想像すると興味も尽きないが、あのオペラ本編の音楽を思い浮かべて対比してみると、この作品の方は、やはり激しすぎ、重すぎる感がしないでもない。

 ともあれ期待通りだったのは、リゲティとルトスワフスキだ。
 前者のピアノ協奏曲は1988年完成の、25分弱の作品だが、複雑精妙なリズム、楽器の特殊な演奏法による音色の多彩さ、千変万化の和声の響きなど、目も眩むばかりの世界が展開する。そして、目を閉じて聴いていると、その感覚的な衝撃がいっそう凄まじいものになる。鋭角的なソロで快演したエマールもさることながら、カンブルランと読響の演奏の、縦横無尽に音が飛び交う鮮やかさは、実に見事なものだった。

 なおエマールはそのあと、アンコールとして、同じリゲティの「ムジカ・リチェルカーレ」からの第7番と、一度引っ込んでからまたもうひとつ、第8番なる曲を弾いた(もし拍手が続いていたら、あの勢いでは、もっと弾いたかもしれない)。

 この日のプログラムを締め括ったのはルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」だったが、これまた見事と言うほかはない濃密な演奏。1954年完成の作品だから、これまでにも何度か聴いているはずだが、今日の演奏は、これほど多彩で面白い曲だったか、と改めて感動してしまうほどの快演だった。各楽器の「協奏」━━というより「飛び交う音群」が、些かも「ごった煮状態」にならず、鮮明に、明晰に交錯して行く面白さ。カンブルランの優れた手腕。そして、やっぱりこの曲はナマで聴くに限る、と改めて痛感する。
 この曲のあとで沸き起こったブラヴォーの声は、先ほどのコンチェルトでのそれを凌ぐ勢いだった。カンブルランも、ソロ・カーテンコールされた。彼の人気は今なお衰えていない。

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