2024-02

2024・2・12(月)倉本聰原作 渡辺俊幸作曲 オペラ「ニングル」

      めぐろパーシモンホール 大ホール  2時

 日本オペラ協会の公演で、「日本オペラシリーズ」のNo.86。倉本聰の原作を吉田雄生が脚本化、渡辺俊幸が作曲した全2幕のオペラ「ニングル」の初演。

 物語は如何にも倉本聰の作品らしく、自然破壊の風潮への強烈な抗議というコンセプトに満ち満ちており、森が伐採されたことから起こる鉄砲水、渇水などの災害や、「今からでも遅くはない」と新しい生命の育成を願う「希望」などが交錯する内容だが、それらが叙事詩的な描き方でなく、そこに住む人々のドラマとして展開して行くという、ヒューマンであたたかい物語になっているところが特徴である。
 原作が書かれたのはほぼ40年前の由で、あの「北の国から」の連続ドラマと共通したコンセプトも感じられるし、効果的な「泣かせ」の手法にも事欠かないようだ。

 「ニングル」とは、プログラム冊子掲載の倉本聰本人のコメントによれば「富良野の森に住む、体長15~20センチ、200~300年の寿命を持つという小さな人間」なのだそうで、早い話が「森の樹々の精」を意味するのかもしれない。
 そのニングルがカムイの老人の姿を借りて「森の樹々は2百年も3百年も黙々として生き、豊富な水をも生み出して来た。だが人間たちはたった5分でその命を絶ってしまう」と非難するくだりなど、すこぶる感動的である。このドラマを彩る渡辺俊幸の音楽もまた実に叙情的で美しく、物語のコンセプトに相応しい。

 今回の初演では、田中祐子が引き締まった見事な指揮で音楽面をまとめ、最近の著しい成長ぶりを示していた。また岩田達宗も極めて解り易い明快な演出で「農村の物語」を描き出したが、登場人物の長いモノローグ━━所謂アリア的な性格を持った個所では、常に客席の方へ顔を向けて歌うという、栗山昌良スタイルの手法を多用し続けていたのが、私としては些か気になる。

 10日、11日、12日の連続3回公演で、出演陣はダブルキャスト。今日は、主人公のユタ(勇太)を須藤慎吾、その妻かやを丸尾有香、ユタの父・民吉を久保田真澄、ユタの義弟・才三を海道弘昭、その妻ミクリを別府美沙子、民吉の亡き長女かつらを佐藤美枝子、その娘スカンポを中桐かなえ、ニングルの長を江原啓之が歌い演じ、その他大勢の歌手たちも好演していた。
 合唱は日本オペラ協会合唱団、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。上演時間は正味2時間20分ほど。

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