2024-03

2011・5・17(火)リーズ・ドゥ・ラ・サール・ピアノ・リサイタル

   紀尾井ホール  7時

 美女リーズ・ドゥ・ラ・サールの演奏の特徴の一つは、その清楚な妖精のごとき容姿からは予想できぬほど鮮烈な、切り込むような鋭さにあるだろう。
 透徹した白色の光の中に煌きながら沸騰する音のエネルギーは、細身ながら強靭そのものだ。極度に明晰な隈取りを持った音が強烈な意志力を持って乱舞し、聴き手にも並々ならぬ緊張感を強いる。

 そうした特質は、今日の「全リスト・プログラム」の、特に第1部の4曲――「バラード第2番」「葬送」「愛の夢第3番」「ダンテを読んで」にも如実に示されていた。
 3曲目に置かれた「愛の夢」が、それまでの緊迫した雰囲気を和らげ、解放感を持たせるのかと思っていたら、さにあらず。一般的なイメージとは正反対の、攻撃的な「愛の夢」になっていて、聴き手はこの4曲(計1時間)がまさに統一された世界として構築されていたのを知ることになる。
 これが彼女のリスト観の一つの側面なのか、と唸ったり、感嘆したり。

 ところが、ドゥ・ラ・サールは、第2部に入ると、今度は編曲ものを通じて、リスト解釈のもう一つの側面を聴かせて来る。
 シューマンの「献呈」と「春の夜」、モーツァルトの「ラクリモーザ」、シューベルトの「セレナード」、ワーグナーの「イゾルデの愛の死」――この5曲の編曲版の演奏で彼女が紡ぎ出した叙情美は、驚異的でさえあった。
 特に「ラクリモーザ」における近代音楽的な複雑な音の組み立てや、「セレナード」における旋律と和音の素朴で微細な美、といったものを浮彫りにして行く透明感に満ちた演奏は、見事というほかない。

 「愛の死」は、この所いろいろなピアニストでよく聴く機会のある曲だが、これほど内声部の音の綾が美しく織り成された演奏は、稀だろう。やはり、ただものではないピアニストである。

 アンコールは、ショパンの遺作の「夜想曲嬰ハ短調」、ドビュッシーの「パックの踊り」、スカルラッティの「ソナタK.159(L104)」、ショパンの「夜想曲ホ短調作品72の1」。時に夢幻的な、時に神秘的な、時に軽快な、しかも清澄で洗練された演奏は、何とも快い。ここでは、第1部での激烈なリストの世界すら遠い昔のことのように感じられてしまう。

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