2024-02

2011・9・3(土)ピエタリ・インキネン指揮日本フィル マーラーの「3番」

  サントリーホール  7時

 つい2年半ほど前まであんなに荒れた音を出していたその同じオーケストラとはとても思えないほど、引き締まった演奏を繰り広げた今日の日本フィル。
 もちろんこういう演奏は一朝一夕に成るわけではなく、ラザレフやインキネンをはじめ、何人かの客演指揮者たちにより整備されてきた結果に違いないが、とにかく定期公演での演奏が安定して来ているのは喜ばしいことである。

 今日のマーラーの「第3交響曲」は、このオーケストラが総力を挙げた演奏と言っていいだろう。
 見事なソロを聴かせる江口有香をコンサートミストレスとする弦楽器群の充実は、第6楽章でその最大の良さを発揮した。また、楽器を高く上げる例の「吹き矢スタイル」でフォルティシモを吹き上げたオーボエやクラリネットを含む木管楽器群も強力だった。第1楽章でのトロンボーンもいい。

 ホルンとトランペットは、第1楽章では快調だったのだが、そのうち息が切れたか? フォルティシモの個所では実にパワフルだが、ピアニッシモの個所がどうも不可ない・・・・。
 しかし、第3楽章での舞台外からのポストホルン(客演首席トランペット奏者のオッタビアーノ・クリストーフォリが吹いた)は、おそろしく上手かった。このパートがこれだけ流れるように美しく完璧に吹かれたのを、これまで聴いたことがないほどである。彼を擁する日本フィルは誇ってよいだろう。距離感と音量もおそらくベストで、舞台上の楽器群と重なる個所においてもすべてのパートを明確に聴き取ることができた。

 インキネンの指揮は、予想通り、明晰で端整な剛直さを備えた構築で全曲を押し通す。すっきりして切れ味のいい表現で、内向的な翳りなどといった要素は全くなく、一種の快さにあふれる。どちらかと言えばクールなタッチだが、決して無機的ではない。第1楽章の終結など、みるみるテンポを速めて高揚に導くところ、呼吸は鮮やかだ。

 とはいえ、前半の3つの楽章など、それぞれの楽章に音色の変化がもう一つ明確に出れば、いっそう多彩なものになっただろうが、このあたりが彼の若さだろうか。
 一方、終楽章最後の壮大な盛り上がりの個所も力感にあふれていたが、ここで金管楽器群の音色がもっと美しく均衡を保っていれば、インキネンの求めたであろう清廉な法悦感といったものが更にはっきり出たのではないか。このあたり、オケとして解決が求められるところだろう。
 ――だが、このフィナーレの最後の昂揚は、何度聴いてもいいものである。

 メゾ・ソプラノのソロは、エストニア出身のアンネリー・ペーポという大柄な人。たっぷりした声で夜の無限の深さを歌い上げた。
 合唱は栗友会合唱団の女声と、杉並児童合唱団。女声合唱にはもう少しリズム感とメリハリが欲しいところ。
 しかし、第4楽章に入った時に起立した合唱全員が、そのまま全曲が終るまでずっと立ちっ放しだったのは、さぞ大変だったろうと思う。誰か貧血を起こして倒れはしないか、どのタイミングで座るだろうかと、長い第6楽章の間じゅう気になって仕方がなかった。何しろこの曲の合唱では、気分が悪くなって座り込んだり、居眠りして立ち遅れたりする人がいたのを見たこともあるので。

 日本フィルの秋のシーズン、成功裡に幕を開けたといえよう。

コメント

東条先生、こんにちは。私は初日(2日)のほうを聴かせていただきました。この週の月曜日には大野+東フィルで第2番の演奏会もあり、そちらも聴かせていただいたのですが、少し失礼な言い方かもしれませんが、こじんまりとまとまっただけの大野+東フィルよりも、多少テクニックには難があってもきっちりと構築されて指揮者の主張がはっきりと出ていたこの日の第3番のほうが楽しめました。
初日の演奏では、出だし、アンサンブルがかなりバラバラで、このオーケストラ、どうかしちゃったの?と思ったのですが、第一楽章終盤のトロンボーンの長いソロの後で第6楽章の主題の断片がチェロで奏されるところで急に演奏が丁寧になり、それ以降はしっかりと整理された良いバランスの演奏になりました。指揮者が混沌から平定へというのをこのシンフォニーのテーマと捉えて、意図的に第一楽章の途中までを雑然としたまま演奏していたのかなあ、などと考えながら聴いていました。第6楽章のfffでも第一楽章のようにバランスを崩してまで轟音を響かせるのではなく、しっかりとコントロールして音量は押さえていてもプレッシャーでfffを感じさせていたあたり、指揮者の力を感じました。とても興味深い演奏でした。
それにしても、このオーケストラの金管楽器群はどうしちゃったんでしょう。ホルンはいたるところでひっくり返って、特に第4楽章のメゾ・ソプラノのソロの裏の和音はひどかったし、トランペットは第6楽章の再現部の一番見せ場のソロを失敗して、メロディーがなくなってしまいました。トロンボーンが何回かのソロを良く頑張っていた(でも、いっぱい、いっぱいだったみたいです)のと、第3楽章のコルネット(私も演奏中はコルネットだと思って聴いていましたが、カーテンコールではポストホルンを持っていたように見えました)のソロは素晴らしかったですが。
二日目はもっとずっとよくなるんだろうと思っていましたが、あんまり変わらなかったみたいですね。このあたり、日本の他のオーケストラにも同じような傾向のところがありますが、何とかして欲しいものです。

何はともあれ、マーラーの3番は、好きです。
一番好きな楽章は、第6楽章ですね。家でCDをかける時も。
なぜなら、ブラームスの1番の交響曲4楽章の崩しを崩した旋律だから。
前半の30分むせ返るようなくどい同じ楽想が何度も登場してきても、次第に雲が取れる様に浄化されるようで。
台風の影響で、会社が休みになってしまい、出かけることができました。寄席に行こうか、文楽に行こうか、家で寝ていようか、考えた末、やはりクラシックをとってしまいました。今、趣味の幅をよりたくさんに増強中につき。営業なので、会話の幅を広く持ちたいので。仕事をしていても、クラシックが趣味。それものめりこむ状況の人は、1%いないですから。
インキネンって、オペラを振ることのできる指揮者ですね。ラザレフも。1988年にボリショイでそれも1回しか振らなかったボリス。音楽監督なのに。

日本フィル、オペラコンツェルタンテ、新日本フィルみたいに小細工やらないで純粋に演奏会形式を繰り返すと、音の雑然さ、改善されると思いますが。
なぜなら、オーケストラだけの音を聞くだけでなく、なんで、歌手や合唱の声が鳴っているとき、自分のパートがなっているのか。
耳がより洗練されて、自分の楽器に吹き込む息により細心の注意を払うようになることが期待できるからです。

オペラを知っている指揮者を抱える楽団の音、改善されていますね。新聞屋さんのオーケストラ。新国をドタキャンした指揮者のオーケストラも。オケピットに入っても得た指揮者によって、こうも違う音をどうして作ってしまうのかというオーケストラも。

課題は、集客力。盂蘭盆会(7月中旬)以降過ぎてからの景気の落ち込み、現役引退した世代の財布の紐の固さは、半端ではないですよ。高齢化社会のコンサートの集客、よりいっそう手厳しくなっていきます。

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