2024-02

2011・9・17(土)ボローニャ歌劇場 ベルリーニ:「清教徒」(東京初日)

   東京文化会館大ホール  3時

 王党派の騎士アルトゥーロを歌うはずだった超人テナー、ファン・ディエゴ・フローレスは来なかったが、代役で登場したセルソ・アルベロは、それなりによくやった。
 残念ながらフローレスが持っている気品、洗練、まっすぐに伸びる明るい声、といったような個性は望むべくもなく、例の高音も精一杯という感もあったものの、それでもあそこまでの声を出せるというのは、テノール一般として考えてみれば、立派なことに違いないのである。

 応援と期待と、それにおそらく若干の底意地悪い静観と――が交錯する中で第1幕の最初のアリアを緊張の裡に歌い切ったアルベロには、万雷の拍手とブラヴォーが贈られた。
 寄り添っていたエルヴィーラ役のデジレ・ランカトーレが「おめでとう」というようにそっと微笑むと、アルベロが初めてホッとしたような表情を見せ、客席に向かって微かに顔を和ませた光景が実に印象的であった。
 こういう顔を見てしまうと、いくらフローレスのようには行かなくても、「いいじゃないの、一所懸命やってるんだから」という気になってしまう。とにかく、あまり声に無理を課さずに、いっそう伸びてもらいたい人だ。

 もうひとり、アルベロの恋敵たる清教徒の大佐リッカルドを歌うはずながら来日しなかったアルベルト・ガザーレの代役として登場したのは、ルカ・サルシ。この人もなかなかいい。若いが安定して力がある。これからいっそう活躍する人だろう。
 その他、森雅史(清教徒の総司令官ヴァルトン)、ニコラ・ウリヴィエーリ(その弟)ら、男性陣は手堅い。

 エルヴィーラ(ヴァルトンの娘、アルトゥーロの恋人)役のデジレ・ランカトーレは、最も安心して聴けるはずの人だったが、今日は余程調子が悪かったか、第1幕では高音の音程がひどく不安定で、ハラハラさせられた。
 幕が進むに連れて次第に調子を取り戻して行ったのは幸いだったが、それでも低音域の特定の音域では力が入りすぎるのか、終始そこだけ妙な声質になってしまうのが気にかかる。次回以降の公演を聴いた方の感想を待ちたい。

 指揮のミケーレ・マリオッティは、「カルメン」の時とは大違いの、まとまりのある指揮。叙情的なカンタービレが主流のベルリーニの音楽のためもあろう。
 ただし、持って行き方はある程度上手いものの、熱っぽい興奮とは程遠い指揮で、ベルリーニのあの素晴らしい音楽が、全然沸き立たない。このへん、私の好みとは些か異なる。

 演出は・・・・演技も含めてごく様式的で静的なもので、豪華な舞台装飾(?)付のセミステージ上演、あるいはオペラ・コンチェルタンテ上演に似た類のものだ。しかし、それなりにまとまりは良い。気が散らず、音楽に没頭できるという良さはあるだろう(イヤミで言っているのではない)。
 プログラムには「演出:ジョヴァンナ・マレスタ、原演出:ピエラッリ」とクレジットされ、「ピエラッリのオリジナル演出から自由に着想を得ている」但し書がついていた。だが見たところこの演出は、「ピエラッリ演出」と帯に書いてあるユニバーサルの「ボローニャ・ライヴ」のDVDとほとんど同一である。

 念のため、そのDVDのエンド・タイトルをもう一度確認してみたら、そちらには「演出:ピエラッリ、演出アシスタント:ジョヴァンナ・マレスタ」とクレジットされていた。カーテンコールにもピエラッリ本人とおぼしき人が堂々と挨拶に出ている。つまりマレスタは、正しくはいわゆる「演出補」という立場なのであろう。

 6時45分頃終演。

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