2024-03

2011・9・21(水)アイヴォー・ボルトン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団

   東京オペラシティコンサートホール  7時15分

 台風15号の直撃を受け、周辺の電車もみんな止まってしまった今日の夕方。
 それでも「どうにかして会場まで来る」という人々も少なくなく、開演を15分遅らせて演奏会が始められた時には、聴衆は200人くらいいたろうか。途中から来た人たちも多かったらしく、終演時には思いのほか人数が増えていた。

 演奏開始前にボルトンが客席に向かい、「こんな大変な天候の中を聴きに来てくれてありがとう」と礼を述べ、聴衆も大きな拍手で応じるという具合で、そのあと始まった演奏も熱が入って見事。
 このような「非常事態」の時には、演奏者と聴衆の気持が通い合うというケースが多い。大震災のあとの演奏会でもこういうことがあった。

 さて、今夜のプログラムは全モーツァルトで、「ピアノ協奏曲第21番」を中に挟み、初めに「交響曲第39番」、休憩後に「第40番」を置いた魅力的なもの。

 協奏曲でのソリストは、ミュンヘン生れでドイツ人と日本人の両親を持つモナ=飛鳥・オット(20歳)で、容姿も演奏も、いかにも清純派といった感じで、いろいろな意味で初々しい。
 面白かったのは、彼女のソロが、ボルトンの引き出す雄弁で強烈な表情のオーケストラに対し、美しいほどに均衡を保った対話を繰り広げていること。この人は室内楽を演奏したらとてつもなく上手いのではないかと思わせる。

 オーケストラの弦は8・6・5・4・3だが、ノン・ヴィブラート奏法を生かした響きは強大で激しく、気宇も大きい。デュナミークの対比やアクセントの付与へのボルトンの手法は相変わらず徹底していて、これが二つの交響曲からきわめて多彩な表情を引き出している。

 「39番」の第3楽章のメヌエット主題では、4小節単位で各々にクレッシェンドとデクレッシェンドを組み合わせ、あたかも寄せては返す波のような息づきを与え、この計8小節を起伏豊かなものにしていて面白い。
 また「40番」の第3楽章では、ホルンはじめ木管群に強いアクセントを与え、モーツァルトの天才的な複音楽の要素をいっそう強調して、目も眩むばかりの複雑なリズムの交錯を作り出してくれた。
 聴きに来てよかった、という気持になるのは、こういう新鮮な演奏に触れた瞬間である。

 なお、この「40番」(クラリネット入りの版使用)の時には、チェロを除く全員が立ったまま演奏するというスタイルが採られていた。こうして演奏すると、明らかに「39番」とは響きが異なり、一種の劇的な音響的な迫力が出る。
 作品の性格をそれぞれ際立たせるための興味深い方法だ・・・・と勝手に解釈して納得していたのだが、翌日招聘元に確認してみたら、ボルトンの語る真相(?)はこうだった――オペラシティのアコースティックからすると、立ったまま演奏した方が、響きが良いし、アンサンブルも良くなると考える。ただ前半は、コンチェルトが含まれていたので、便宜上着席して演奏する方法を採ったのだ、と。

   モーストリークラシック12月号

コメント

台風の中、お疲れ様でした。ボルトンさんのアイディア、おもしろいにゃり!でも、ということは、このホールの音響は、本来は、奏者の楽器の位置が、立ったときの高さになるくらいに、舞台を底上げしたほうがよい、ということか?!今まで、気がつかなかったにゃあ・・・。

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