2024-03

2012・3・11(日)びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー:「タンホイザー」2日目

    滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール  2時

 演奏前に芸術監督・沼尻竜典が舞台に現われ、「東日本大震災1年」の日に際し、「祈りをこめて演奏します」という趣旨をスピーチ。

 今日はBキャスト。主役陣は、水口聡(タンホイザー)、佐々木典子(エリーザベト)、並河寿美(ヴェーヌス)、大島幾雄(ヴォルフラム)、大澤建(領主へルマン)という顔ぶれ。
 共演は、岡田尚之(ヴァルター)、大野光彦(ハインリヒ)、加賀清孝(ビテロルフ)、鹿野由之(ラインマル)、福永修子(牧童)らの人々。

 最も光ったのは、やはりエリーザベト役の佐々木典子であろう。
 ふくよかでありながら凛然とした気品のある声は素晴しい。昨夜の安藤赴美子とはまた異なったタイプの、分別ある女性像としての解釈によって、この役柄を見事に歌い演じた。
 「歌の殿堂」での第一声は少し力みすぎかなと思われたが、続くタンホイザーとの2重唱では、一寸躊躇ったような個所で声の表情をふっと変えてみせた個所など、聴き手をハッとさせるものがある。
 とりわけ、剣を閃かせて迫る騎士たちからタンホイザーを必死でかばう場面は、まさに迫真の演技だった。ここでは、舞台上の求心力を独り占めにしてしまった。さすがに演技力では若い安藤よりも一日の、いや二日以上の長がある。ベテランの貫禄を充分に示したというところであろう。この場面は、横浜でもう一度観たいと思うくらいだ。

 ヴェーヌスの並河寿美も、力のある歌唱を示した。この人、以前の「トゥーランドット」でもそうだったが、劇的で個性の強い役柄を歌い演じると、なかなかいい。
 ただ、今回のハンペ演出では、このヴェーヌスは両手を拡げる以外にほとんど演技がないので――他にやりようがないのかもしれないが――その範囲でもう少し多様な動きが出ていればもっと面白かったろうに、とも思う。これは前日の小山由美のヴェーヌスでも同様。

 かように、このオペラの重要な2人の女性像――あるいは1人の女性の2つの側面――を歌い演じた女性歌手2人は、前日の2人とともにそれぞれの良さを示していた。

 だが、男性歌手陣のほうは? 
 昨日の組に比べ、言っては何だが、気になるところが少なくない。演技の上でも、ただ手を前方に出すだけの類型的な動きが、前日の組よりずっと多い。指揮者の方ばかり見ながら歌う人もいるし、歌唱面でも、声がふらついたり、やたら走り気味になる人もいる。

 それに今日は、昨日よりプロンプターの声がやたら大きく、客席真ん中あたりでもガンガン聞こえて来た。そんなにセリフが――いや歌詞が入っていなかったのか? タンホイザーが歌っている時のことである。

 そもそもプロンプターの声というのは、普通は客席にまではそんなに聞こえないものである。仮に聞こえたとしても、普通はセリフのように聞こえるものだ。今日のような大きな声で、楽譜にない歌声のようにオーケストラに交じって聞こえるなどということは、通常はないし、あってはならないことだろう。
 ただ、ここで言いたいのは、プロンプター氏がそこまでやらなければならなかったのは何故か、ということなのである。
 
 沼尻竜典の指揮する京都市交響楽団は、今日も序曲から最後の幕切れまで、引き締まって均衡を保った、素晴しい演奏を聴かせてくれた。これは絶賛したい。
 合唱団の出来は昨日とほぼ同様。「大行進曲」のようにパワーで押す個所はいいとしても、第1幕と第3幕の巡礼の合唱(男声)は、粗さがかなり露呈していた。

 沼尻のテンポは、第3幕後半のヴェーヌスベルク出現からタンホイザー、ヴェーヌス、ヴォルフラムの応酬、タンホイザーの死にいたるあたりの個所ではやはり少し遅すぎるかな、と思わないでもなかったが、まあ、それはそれ。そのテンポを、今日のタンホイザーとヴォルフラムは持ち切れなかった、ということかも。
 しかしいずれにせよ、オーケストラの演奏そのものは立派であった!
 

コメント

B組タンホイザーがケタ外れに声が大きい証明でしょうね。
神奈川ではA組になるわけですか。楽しみです。なんといってもオペラは声ですから。

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