2024-03

2012・3・20(火)地方都市オーケストラ・フェスティバル
ニコラス・ミルトン指揮群馬交響楽団 

   すみだトリフォニーホール  3時

 トリフォニーホール恒例の「地方都市オーケストラ・フェスティバル」、今年は18日から27日までで、参加オケは大阪交響楽団、群馬交響楽団、セントラル愛知交響楽団、広島交響楽団。
 ただしその間を縫って札幌交響楽団とオーケストラ・アンサンブル金沢もサントリーホールで東京公演を行なうので、10日の間に各地のオケ計6団体を居ながらにして東京で聴くことができるというわけである。

 群響の今年の東京公演の指揮は、ニコラス・ミルトン。両親はハンガリー人とフランス人で、オーストラリア生まれ。現在キャンベラ響の芸術監督・首席指揮者を務めているという。

 本来は、群響の首席指揮者は沼尻竜典だが、彼は毎年3月にはびわ湖ホール(芸術監督)と神奈川県民ホール等の共同制作オペラの指揮にかかりきりなので、群響が他の時期にでも東京公演をやらない限り、「沼尻と群響」を東京で聴く機会は無い、ということになって、これは残念である。たまたま昨年は大震災のため横浜でのオペラ上演が中止になり、群響東京公演に予定していた外来指揮者も来られなくなったので、彼が急遽トリフォニーホールの指揮台に立つ、ということもあったのだが・・・・。

 今回のプログラムは、ボロディンの「イーゴリ公」からの「ポロヴェッツ人の踊り」(「だったん人」は間違い)、ラヴェルの歌曲「シェエラザード」(ソロは中嶋彰子)、ベルリオーズの「幻想交響曲」というもの。

 冒頭の「ポロヴェッツ人の踊り」は、非常に勢いよく演奏され、力一杯の最強音で閉じられた。
 「幻想交響曲」の第4楽章と第5楽章でも、最後はホールが崩れ落ちんばかりの大音響が強調されて締め括られた。
 このニコラス・ミルトンという人、なかなか演出を心得た指揮者である。

 ただ彼は、本来はやはり、きっちりと隙なく楽曲を構築し、几帳面なほど丁寧に音楽をつくる人なのだろうと思う。
 「幻想」は、全体としては本当に生真面目な演奏になっていた。作曲者ベルリオーズがこの作品に託した「狂気の幻想」――ディオニュソス的な狂乱を描くには、これはちょっとコリン・デイヴィス的な、「ネクタイをきちんと締めた」演奏と言えるかもしれない。だがそれはそれで、この曲に備わっている古典的で構築的な面を浮彫りにするという意味では、面白いアプローチとも言えよう。
 それに群響は、実に堂々とした演奏を聴かせてくれたのである。

 しかし私の印象では、この日の最も優れた演奏は、ラヴェルの「シェエラザード」であったと思う。ここで披露されたミルトンの叙情的感性は、彼の中に流れるフランス人の血ゆえのものかもしれない。群響も整然とした佇まいながら、極めて柔らかく詩的な表情にあふれていた。
 とりわけソロを歌った中嶋彰子の、低音域への妖艶な声の伸び(1曲目の「アジア」など見事)を含めた官能的な表情が素晴らしく、ドビュッシーの叙情的朗読のスタイルの影響下にあった時代のラヴェルの作品の特徴を美しく描き出してくれた――彼女、この声なら、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」を歌ったら素敵なのではなかろうか?

   音楽の友5月号 演奏会評

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