2024-03

2012・5・7(月)新日本フィル創立40周年記念特別演奏会

   すみだトリフォニーホール  7時15分

 この日の午後、新日本フィル創立40周年記念と、音楽監督クリスティアン・アルミンクの最後のシーズン(13年夏まで)企画の説明、トリフォニーホール開館15周年記念などを含めた記者発表会が行なわれた。

 アルミンクは、来年8月にマーラーの「第3交響曲」を指揮して、10シーズンにわたる任期を終えることになる。
 ともあれ、アルミンクがこれまで果たして来ている役割は――たとえ昨年の大震災の直後にあれこれあったにしても――非常に大きい。
 90年代には目標を失い、あれほど荒廃していた新日本フィルを、着任以降見事に復活させ、独特の透徹した音色を確立させて演奏水準を高め、レパートリーを大胆に拡大して近代・現代の作品を積極的にプログラムに乗せ、さらには先鋭的な傾向を持つ売れっ子ハーディングやメッツマッハーを定期的な客演指揮者として招聘し、このオーケストラの路線とイメージと個性を明確にしてみせ、――等々、その功績は数え切れないほどある。

 席上では、ダニエル・ハーディング(Music Partner of NJP)の2013年秋以降2年間の契約延長が発表され、またアルミンクのあとにはインゴ・メッツマッハーが「Conductor in Residence」という肩書でシェフの役割を務めることが発表された。
 これは、新日本フィルにとっても、小澤征爾や井上道義、アルミンクら歴代のシェフ(もしくはそれに等しい指揮者)により脈々と継承されて来た「モダンな傾向のオケ」というべき路線を、さらに発展させる意味を持つだろう。
 この40年間、現場でずっとこのオケを聴いて来た私には、それは創立以来の「ブレない路線」に思えて興味深い。

 記者発表の最中、大ホールでこれからリハーサルに入るというハーディングが突然現われ、アルミンクと一緒に賑やかに記者連中へ短い挨拶を行なった。
 ハーディングの言うところでは、アルミンクとは昔からの知り合いで、自分は昔チビだったが、アルミンクはその頃から「スラリと背の高いいい男」だったとか。また席上では、2人が弟子だった頃についての小澤征爾による印象も紹介されたが、それによれば、ハーディングは昔から「大変なやんちゃ坊や」、アルミンクはその頃から「いい男」だった、とのことである。

 さて、「創立40周年記念特別演奏会」の方は、そのハーディングの指揮で行なわれた(もともとは当然、小澤征爾の予定だったらしいが)。
 プログラムはR・シュトラウスの「町人貴族」組曲、ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」、マーラーの第1交響曲「巨人」という、後期ロマン派の香りにあふれるもの。しかも長大である。「巨人」の第1楽章提示部の反復もやったため、終演も9時50分近くになった。
 しかしこれはどれも力演、快演で、ハーディングと新日本フィルがベストの関係にあることを如実に証明していたと言って間違いなかろう。

 圧巻はやはり、藤村実穂子をソリストに迎えた「ヴェーゼンドンク歌曲集」であった。彼女の強靭で深みのある声と、ややストイックながら毅然たる風格を感じさせる表情による歌唱もさることながら、ハーディングと新日本フィルがつくり出した豊かなふくらみのある最弱音が見事の一語に尽きる。
 ともにあまり粘った表現でないだけに、作品の美しさがむしろストレートに出ていた。久しぶりに「ワーグナーの官能の世界」に酔う。

 「町人貴族」も、最初のうちはこういうしなやかな洒落っ気はやはり日本のオケには難しいのかなと感じられたものの、後半は調子も出て、小編成の弦楽器群の軽やかな響きも発揮された。

 そして「巨人」は、――第1楽章あたりではホルンがまたしても(!)頼りない音を出し、これは相当重症かなとヒヤヒヤさせられたが、何とかその後は切り抜けたようだ。
 演奏は第1楽章から第2楽章にかけエネルギッシュな昂揚を示したものの、ハーディングにしてはやはり未だストレートなタッチであり、フィナーレの狂乱も、むしろ音の均衡に配慮した構築のように感じられる。

 しかし、この曲でも、優れていたのはやはりピアニッシモの美しさだった。第4楽章の狂乱の合間にフッと訪れる、静寂の沈潜――今夜のハーディングと新日本フィルの最良のものは、こうした緻密な音づくりの瞬間にこそあったと言えるだろう。

コメント

東条先生、こんばんは。お久しぶりです。
久しぶりにコメントさせていただきます。
まず悪口から。新日フィルのホルンはかなり重症です。これはここ数年の傾向で、これを何とかしないと・・・・いろいろな事情があってメンバーの交代が出来ないのでしょうが、例えば野球やサッカーのプロチームなら、メンバーを入れ替えながら強くなるというのは当然です。何とかしてほしいと思うのは私だけでしょうか。それとも、こういうのは禁句?
この日のマーラーのリハーサルを見せていただきました(4日)。そのときは3回目のリハーサルだということでしたが、第4楽章のアンサンブルもまだぐちゃぐちゃで。それでもハーディングは笑顔を絶やさず、同じ音型のアクセントの付け方への注文に終始していました(言葉で上手く表現できなくてすみません)。その雰囲気に、ハーディングとこのオーケストラの関係がすごく良いことがわかりましたが、そんな中、第4楽章の終盤で、音量を上げることはしなくても良いから、もっとタイトなアンサンブルにしていきましょう、と言っていました。そのとおり、本番では決して大音量で聴衆を興奮させるのではない、芯のある響きを聞かせてくれました。ハーディングが注文をつけていた音型もしっかりと出来上がっていたし、他のところの怪しかったアンサンブルもしっかりとまとまっていて、久しぶりに納得させられた「巨人」でした。
アルミンクのあと、誰があとを継ぐのか不安でしたが、ハーディングとメッツマッハーが引き継ぐということであれば、今以上のクオリティーの演奏を聴かせてくれそうです。定期会員を継続する気になりました。あとはブリュッヘンがいつまで来てくれるかと、やっぱりホルンですか。(ホルンは他の日本のオーケストラでも問題ですけど・・・)

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