2024-03

2012・5・29(火)トーマス・ヘンゲルブロック指揮北ドイツ放送交響楽団(続)

   サントリーホール  7時

 昨夜のアンコールで演奏された「フィガロの結婚」序曲で今夜のコンサートは開始されたが、こちらは残響の豊かなサントリーホールだけあって、演奏の印象にも、より豊麗さが加わる。弦14型での演奏は、ピリオド系指揮者が手がけるモーツァルトにしては、随分と厚みと重みを感じさせた。

 ヘンゲルブロックは、レパートリーに応じて多様なスタイルを採るとは聞いていたが、ハイドンとベートーヴェンの作品をあのようなアプローチで演奏する一方、モーツァルトでこのようなスタイルを採るとは、これは何というか、もはや千変万化の類だ。

 そのあとにおかれたロマン派の作品では、予想通りヴィブラート奏法も取り入れた、かなりオーソドックスな手法が採られる。というより、北ドイツ放送響の昔ながらの持ち味に、ヘンゲルブロックの味を注入した、というタイプの演奏と言えるかもしれない。

 メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」では、昨日に続きクリスティアン・テツラフがソリストを務めたが、これが猛烈な高速テンポのアレグロで――スリル感はあったけれども――別の意味で些か面食らった。
 スコアには「モルト・アパッショナート」(第1楽章)と「モルト・ヴィヴァーチェ」(第3楽章)と指定があるのは事実だけれども、しかしあれではまるで、パガニーニの協奏曲か何かを弾いているようではないか? だいいち、飛ばし過ぎて音を外し(それはご愛敬としても)、音楽が雑になってしまっては何にもなるまい。
 オーケストラの方は、それでも何とか大人の度量(?)で合わせて行った。

 その点、プログラム後半に演奏されたブラームスの「第1交響曲ハ短調」では、現在の彼らの姿勢が、もう少しはっきり出る。
 弦は16型編成の対向配置で、下手側にヴィオラを、上手側にチェロを置くが、コントラバスを4本ずつ上手側と下手側に分割して配置していたのが興味深い。2階席正面からではその音響効果が万全な形で聞き取れたとは言い難いが、聴く位置によっては、低音がオーケストラ全体を包み込むように感じられたであろう。

 曲の冒頭、下行する木管群とホルンとヴィオラに対し、上行するヴァイオリン群を初めのうち少し弱めに設定して、高く上昇するに従って次第に強めて行くという「聞き慣れないバランス効果」が――以前にも誰かの指揮で聴いた記憶があるが、誰だったっけ? 上岡敏之か、それとも?――まず耳をそばだたせる。
 ただ、そのあとは、たまさかにテンポを大きく制御することはあったとしても、比較的まっとうなスタイルの指揮だ。少なくともハーディングやパーヴォ・ヤルヴィが気心知れたオケ相手にやるような、個性的で大胆な試みは無い。

 今のところは、前述のように、北ドイツ放送響の良さを尊重しつつ――といったヘンゲルブロックの指揮であろう。全曲最後のハ長調の堂々たる和音に、今も残るこのオーケストラの本領を聴いたような気がする。

 アンコールは、意外にもドヴォルジャークの「チェコ組曲」からの第5曲「フリアント」。変な言い方だが、これが一番ドイツのオーケストラらしい響きを出していた。

 前夜もそうだったが、ステージのお別れは、オケ全員が一斉に最敬礼する「日本フィル方式」。少し違うのは、指揮者も楽員の真ん中に入って答礼するということか。今夜はこれが御丁寧に2回も繰り返され、大拍手もそれでやっと収まった。

コメント

「フィガロの結婚」序曲では、ヴァルヴなしホルンを使用していて、メンデルスゾーンになると、ヴァルヴ付きに持ち替えていました。ドイツのオーケストラの人って器用ですね。日本にも両方できる演奏家はいますけれど。テツラフはたしかに、誰もオレを止められないぜ、とでもいいたげな中年暴走族的な演奏。大家然とした演奏をすると期待していたので、意表を突かれました。暴風雨。ブラームスはとても良かったです。

興味深かかったのはティンパニ奏者。ブラームスとアンコールでは暗譜で(楽譜台なし)演奏していました!

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