2024-03

2012・6・9(土)ゾルタン・コチシュ指揮東京交響楽団

    サントリーホール大ホール  6時

 コチシュの指揮歴はすでに25年に及ぶそうであり、その中にはハンガリー国立響音楽監督というキャリアも含まれているわけだが、私にはどうも彼の指揮の印象がほとんどない。事実上、今回が初めて彼の指揮を聴くようなものである。

 で、言っては何だが、あまり期待度は高くなかった。ところが、やはり聴いてみるものだ。なかなかの手腕である。
 特にバルトークの「管弦楽のための協奏曲」は、「お国もの」ということを差し引いてみても、初めての客演である東京交響楽団からこれほどの個性的な音を引き出したという点で、立派なものであった。好調の東響が自ら音を創って行ったという面ももちろんあるだろうけれど。

 プログラムの1曲目は、R・シュトラウスの「マクベス」だった。これを暗譜で指揮していたのには感心したが、スピーディな感じでよくまとめているとはいえ、曲もあまり面白いものでもないし、特にコチシュの個性を打ち出した演奏というほどでもない。

 次のモーツァルトの「ピアノ協奏曲第17番」では弦編成を6・6・4・3・1という小規模なものにし、コチシュはP席の方を向いて座り、蓋を取り去ったピアノで弾き振り。この日のプログラムでの人気の的だ。室内楽的な溶け合いを聴かせるアンサンブルとの対話が快い。

 後半が前述のバルトーク。もちろん暗譜での指揮。5つの楽章をほとんど切れ目なく構成して有機的な展開を狙い、自然な起伏感で曲をクライマックスに導き、各楽器を明晰に浮かび上がらせて対比させるあたり、コチシュの指揮は堂に入ったものだ。
 弦楽器群にはさすがにハンガリーの弦の音色が反映され・・・・となるかと思ったが、これはちょっと期待が過ぎたか。

 第1楽章ではやや気負ったような、硬質な音も感じられたが、第2楽章に入ると、オーケストラにはみるみる空間的な拡がりと、ミステリアスなイメージさえ湛えた響きが増して行く。
 第2楽章での微細な強弱の変化も見事だったファゴット群(第165小節以降)をはじめ、同楽章最後で幻想的な響きを出した木管群、豊潤なふくらみをいっぱいにあふれさせた弦楽器群など、東響が実にいい音を出す。これほど温かい音色のバルトークのオケコンは、そうそう数多く聞かれるものではなかったろう。

 カーテンコールでコチシュは、ホルン奏者たちを起立させるのを忘れてしまったのを、高木和弘コンマスから注意されたのか・・・・2人の陽気なジェスチュアによる「内緒のやりとり」は、その内容を想像する聴衆の笑いを誘った。そうした明るいステージの雰囲気も、コチシュの人柄を反映したものかもしれない。
    音楽の友8月号 演奏会評

コメント

聴いていた印象では、R.シュトラウスとバルトークを逆にしてしまったほうが、良かったのに。と、バルトークを聞いていて最初、思いました。
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オケコン、どう考えても、<ピアニストの発想かな?>という箇所がたくさんあったような。右手の旋律を浮かび上がらせるために、左手のやるべきこと。に重きがあるような。だから、切れ目なしにもなるような。
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LDブロックで聴いていたから、R.シュトラウスは、洗練され。モーツァルトでは、さらに洗練されて。オケコンでは、混色気味に聞こえる音色の中に、あまり耳にしない左手で奏でる縁の下のパートがあるから、オケコンがあるのかな。と聴きつつ。そういう中に、縁の下のパートも、難しいパートだと気付き。
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興味ある演奏でした。また、来て欲しいな。練習、意外に大変だったろうな。普通に仕事している枠の中で。たとえば、3楽章と4楽章は、普通の感覚と違うから。慣れ親しんだ固定された感覚の枠を外す必要があるから。

まるで、ハープの世界のような、ピアノでした。第二楽章だったか、第一バイオリンのハーモニーがもう少々コクがあったら、もっとよかった。テンポだろうか。
バルトークも、管も弦もバランスよく美しく。
標題音楽も、説得力があり、イマジネーションがよく伝わる。そして、モーツアルトと純粋音楽の新旧が、興味深く捉えられていました。
 コチュシュさんは、洒脱な方なのですね。

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