2024-03

2012・10・14(日)ロリン・マゼール指揮NHK交響楽団 A定期

   NHKホール  3時

 1963年のベルリン・ドイツオペラとの帯同以来、数限りなく来日を重ねているロリン・マゼールだが、N響に客演するのは今回が初。10月定期を3週計6回と、NHK音楽祭での公演を1回指揮する。
 第1週のプログラムは、チャイコフスキーの「組曲第3番ト長調」、ライナー・キュッヒルをソリストとするグラズノフの「ヴァイオリン協奏曲イ短調」、スクリャービンの「法悦の詩」というロシアものだった。今日は2日目の公演。

 昔ながらの力感溢れる指揮で、特にグラズノフやスクリャービンでは、N響を豊麗に鳴らしてくれた。「法悦の詩」など、N響がこれほど色彩的な音色を出すのを聴いたのは久しぶりのような気がする。

 ただ、昔のマゼールの指揮に比べると、いわゆる「あざとさ」が消えてしまったというか、淡白な味の音楽になってしまっているところが、マゼール・ファンの私としては些か物足りない。
 マゼールの指揮というのは昔からそれこそ千変万化で、放送のマイクが立っている時には整然たる造型を優先した生真面目な指揮をしたかと思えば、放送無しの翌日は、同じ曲でありながら、人が変ったように大胆奔放な指揮をすることがしばしばあった。フランス国立管弦楽団やフィルハーモニア管弦楽団との演奏会などでも、その自在な変貌ぶりには驚かされたものである。

 今日は放送の生中継や収録も無かったし、もしやと期待していたのだが・・・・マゼールとしてはやはり、かなり「おとなしい」演奏であった。
 まあ、もちろん、音楽監督や首席指揮者として気心知れた関係にあるオーケストラならともかく、初めて客演するオーケストラが相手となれば、そう自在に振り分けるわけに行かないというのは考えるまでもないことなのだが。

 しかし、そんな奇抜なことをやらない時のマゼールの指揮が全く面白くないと言っているのではない。
 かつてバイエルン放送響の楽員たちは、「彼が両手を大きく拡げて、もっと、もっと、という身振りをすると、私たちはふだん出せないような大きな音で、大きなスケールの演奏をしてしまうのです」と語ってくれたことがある。今のマゼールはそれほどダイナミックな身振りをしなくなったようだが、それでも「法悦の詩」のクライマックスなどでは、N響は見事に均衡を保ったまま、陶酔的なほど豊満なハーモニーを響かせてくれたのであった。

 大マゼール、20年ほど前には私のインタビューに答えて「50歳になったら指揮者を引退するつもりだったが、その後、期限を60歳まで延ばすことに決めた。しかし、結局まだ今でも指揮している」と、冗談とも本気ともつかぬ顔で語っていたことがあった。いま、彼は82歳。スクロヴァチェフスキやハイティンクやヴィンシャーマンに比べれば、未だ未だ若い。今秋にはミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任するし(来春来日)、ますます元気なようで、祝着至極である。
    音楽の友12月号 演奏会評

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/1492-dd77a112
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中