2024-03

2013・12・12(木)WAGNER生誕200年記念コンサート
KONFRONTATION~対決~

    Hakuju Hall(白寿ホール) 7時

 プログラムは、ワーグナーの「タンホイザー」第1幕から「タンホイザーとヴェーヌスの場」(パリ版)、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第2幕から「ザックスとベックメッサーの場」、「ジークフリート」第3幕から「ジークフリートとヴォータンの場」、「神々の黄昏」第2幕から「ブリュンヒルデ、ハーゲン、グンターの場」。
 これらの間に、ワーグナーのピアノ小品が3曲、「M侯爵夫人のアルバムに ハ長調」、「主題変イ長調《エレジー》」、「ベティ・ショット夫人のためのアルバムの綴り 変ホ長調」が織り込まれる。

 歌手陣は,池田香織(ソプラノ)、片寄純也(テノール)、大塚博章(バリトン)、大沼徹(バリトン)。この4人が、それぞれ役柄を変えながら歌った。
 協演はオーケストラではなく、ピアノ、ハープ、アイリッシュ・ハープのみである。

 だが、ピアニストを務めた若い木下志寿子が極めて巧く、単にヴォーカル・スコアのピアノ・パートを機械的に演奏して伴奏に堕するのではなく、ドラマトゥルグに基づいた起伏の大きな、生き生きした表情で弾いてくれるので、音楽的に充分な内容を持つ演奏となっていた。
 オペラでこういう「生きた音楽」を弾くことのできるピアニストは、なかなかいないだろう。私自身が聴いた人の中では、最近では西聡美(2011年のびわ湖のコンヴィチュニー演出セミナーで「ラ・ボエーム」を弾いた)以来、2人目である。ハープの操美穂子もいい演奏を聴かせてくれた。

 こういう演奏を引き出した功績は、城谷正博の指揮に拠るところが極めて大きいだろう。
 新国立劇場で副指揮者等を務め、縁の下の力持として大きな実績を持つ彼の指揮は、実に明快できびきびしていた。すべて暗譜で指揮、歌手や奏者たちに細かく明確な指示を出し、速めのテンポで演奏を盛り上げる。ザックスがベックメッサーの歌を妨害するため靴底を叩く速いテンポのリズムは、歌手自身もよく覚えられないと言われる個所だが、これを左手で「叩け、待て、叩け、待て」と猛速で細かく指示を出して行く――もちろん右手は全体を指揮している――さまは、以前、日本ワーグナー協会の例会で披露したのをわれわれも見て舌を巻いたものだ。今回もそれに近い指揮を見せてくれたが、あれなら歌手は間違うことは絶対なかろう。

 おなじみの歌手たちは、大舞台でこの役を歌い演じるのと同じように、みんな全力で見事に歌ってくれた。もっともそうなると、この小さなホール(客席数300)では声があまりにビンビン響き過ぎる。ワーグナーの音楽というのは、やはり大歌劇場にふさわしいものなのだ、ということを今夜は改めてしみじみと感じたのであった。特に池田(ブリュンヒルデ)、大塚(ハーゲン)、大沼(グンター)が応酬する「神々の黄昏」は、音量も演奏も凄まじい迫力だった。

 字幕は吉田真によるもので、ニュアンスと雰囲気は完璧である。
 なおこのコンサートは「わ」の会主催で、「わ」とは、ワーグナーの「わ」であり、「ニーベルングの指環」の「わ」、スタッフ・キャストの「わ」である由。

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