2024-03

2013・12・14(土)いずみホール モーツァルト「イドメネオ」(演奏会形式)

    いずみホール  4時

客席数820ほどの中規模会場ながら、このいずみホールは長年にわたりオペラ・シリーズを続けている。その演奏水準は、毎回、極めて高い。
 今年、私が聴きに来たのは、「シモン・ボッカネグラ」(→6月22日の項)に次いで、2つめである。ただし今回はいつものようなセミ・ステージ形式上演ではなく、演奏会形式上演だ。客席は満杯。完売の由。

 ステージには、大勝秀也が指揮するザ・カレッジオペラハウス管弦楽団(大阪音大)が並んだ。弦楽器群が明晰清澄な、綺麗な音を出す。冒頭の序曲からして、響きにスケールの大きさと、引き締まったリズム感と、みなぎる生気があって、快い。大勝はきびきびしたテンポで全曲を構築し、モーツァルトのこの傑作オペラを、ヴィヴィッドに再現してくれた。

 オーケストラの後方に並ぶ歌手陣も、いい顔ぶれが揃っていた。
 題名役のイドメネオを歌ったのは福井敬。いつものようにパワフルな歌唱で、王にふさわしい風格と威厳を感じさせ、特に第2幕でのアリアは盛大な拍手を浴びた。
 イダマンテはメゾ・ソプラノの林美智子。ズボン役のカッコ良さを見せたことはいうまでもなく、苦悩しつつも凛然たる気品を備えた王子の役柄を見事に表現していた。

 その恋人のイリア役は幸田浩子。この人は純な王女の役はうってつけで、歌唱も立ち姿もはまり切っている。
 王の忠臣アルバーチェ役の中井亮一は第3幕の長大なアリアで本領を発揮、大祭司役の小餅谷哲男も短い出番だったが存在感を発揮していた。海神役の片桐直樹も、最後に上手舞台寄りのバルコン席に姿を現し、威厳のある歌唱を聴かせ、このドラマを締めくくる役割を果たしてくれた。

 そして、激情の女性エレットラを歌ったのは並河寿美。彼女もまさしくはまり役だが、今回はミュンヘン初演版による上演とのことで、あのエレットラの聴かせどころたる激怒のアリアが歌われないのは、なんとも残念であった。ドラマティックな役柄の歌唱が得意の人だから、もしあのアリアを歌っていたら、間違いなく客席を沸かせたことであろう。
 上演版の選択が重要な問題であることは充分承知しているけれども、こういうケースの場合には、あまりアカデミックにこだわらなくてもいいんじゃないか――という気がしてしまう。つまり、折衷版も悪くなかろう、ということだ(こんなことを言うと、ホールのディレクターの礒山雅先生に叱られるだろうが)。

 字幕は懇切丁寧、CDの対訳本にあるような詳細正確な訳文だが、かなりのスピードで切り変って行くスクリーンの字幕としてはあまりに文字数が多すぎ、視る者の眼と神経を疲れさせる。過ぎたるは及ばざるがごとしで、今回のこれは失敗だろう。このホールのスクリーンが小さいのでなおさらである。
 ただ、クレタ島に軍が上陸する行進曲の箇所でト書き(のような情景説明)を字幕に出したのは、当を得た方法である。一般的に、演奏会形式オペラでの字幕も歌詞部分だけのことが多いが、舞台上の演技が伴っていないために、オーケストラのみの演奏が長く続く個所では、ストーリーがよく呑み込めないこともあるからだ(「ヴァルキューレ」第1幕など最たるものである)。今回のようにその場の情景が字幕で出れば、初めてこのオペラに接する人たちも内容をよく理解できるだろう。

 20分の休憩2回を含み、7時35分終演。長丁場だったが、ただの一瞬も退屈することがなかった。いい演奏であった。

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