2024-02

2013・12・22(日)バッハ・コレギウム・ジャパンの「メサイア」

    軽井沢大賀ホール  6時

 冬の軽井沢でヘンデルの「メサイア」を聴くのもいいものだろう、と出かけてみる。

 久しぶりにクルマで行こうと思っていたが、これまで愛用していたミシュランのスタッドレスがついに寿命となっていたのを思い出し、慌てて行きつけの工場に新品を頼んだものの品切れと聞き、仕方なく新幹線を予約した。もっとも東京駅からたったの1時間だから、確かに楽だし、昔に比べれば随分便利になったものである。

 大賀ホールは、軽井沢駅北口から徒歩10分ほどの距離。ホール周辺の雰囲気の良さでは、札幌の中島公園にある札幌コンサートホールkitara、琵琶湖畔にあるびわ湖ホールと肩を並べるだろう。
 ホール内は客席数784、5角形サラウンド構造。竣工からすでに9年経ち、材質も馴染んで来て、音の鳴りにも硬さがなくなり、落ち着いて来た。残響はそう長い方ではない(満席時1・8秒とか)が、響きは良い。

 バッハ・コレギウム・ジャパンは、今回はオーケストラと合唱団それぞれ20人程度の編成だから、このホールの規模にはちょうどいい。演奏を聴いていると、何か心温まるような、ホッとする気分になれる。
 指揮はもちろん鈴木雅明、コンサートマスターは若松夏美。オケにはヴァイオリンの高田あずみ、チェロの鈴木秀美、ファゴットの堂阪清高、オルガンの大塚直哉らの名もみえる。声楽ソリストはシェラザード・パンタキ(ソプラノ)、ダニエル・テイラー(アルト=カウンターテナー)、櫻田亮(テノール)、クリスティアン・イムラー(バス)。

 鈴木雅明の直截な指揮により、「メサイア」の本来の曲の良さが、飾り気なく甦る。演奏は最初のうち何となく座りが悪かったが、第1部後半から次第に快い流れとなり、後半にかけて尻上がりに調子を出した。
 20分ほどの休憩1回を含み、8時50分に「メサイア」は終る。カーテンコールでの聴衆の盛り上がりはすこぶる大きかった。アンコールではア・カペラのコーラスで、ジョン・ヘンリー・ホプキンスJrの「われらは来たりぬ」という素晴らしく綺麗な曲が歌われ、9時5分に終演となった。

 「ハレルヤ・コーラス」では、わが国でも少なくとも60年代頃までは、渋々とはいえ客の全員が起立していたという記憶がある。今はもうそんな習慣は無くなったに等しいと思っていたが、今夜はそれでも10人ほどが立ち上がっていた。とはいえその人たちが、「しきたりを知らんのか」という表情で周囲を睥睨するような態度を採っていなかったのは賢明であった。
 そもそも、18世紀のロンドンで聴いていた某王様が起立したからといって、21世紀の軽井沢で聴くわれわれまでが立ち上がらなければならぬ義理も筋合もなかろう。立ちたい人は自由に立てばよろしい、強制するのもされるのも御免である、というのが私の考え方だ。
 だがそうはいうものの、たとえばロンドンでこの曲を聴いて、周囲の聴衆全員が起立してしまったら、自分独りだけ座っているわけにも行くまい・・・・。日本でも、両陛下なり皇太子夫妻なりが臨席されて、もしこの曲で起立されたらどうするか、――微妙なところである。

 完全満席ではなかったようだが、良く入っていた。お客さんは長野県内や群馬県からクルマで来る人が多いという。今日の軽井沢は晴だったが、直前に降った雪が積ったままで、夜間は道路も凍結していると聞く。
 前日午後ぎりぎりになって工場から「これでダメならどこへ行ってもダメ」と、新しいブリザックを履かせてもらったので、本当はクルマで来たかった、と現地在住の知人U氏に言ったら、「慣れないヤツはやめとけ、碓氷軽井沢ICへ降りるあの坂は、夜はブレーキ踏んでも止まらないよ」と脅かされた。やはり素人は公共交通機関に限るか。

コメント

30代です。東京では見たことなかったですが、金沢では多くの方々が起立しており、驚きました。

先生、『メサイア』の項ではたぶんいつも“「ハレルヤ」の起立”についてお書きになっていると思います。文章全体からしてなかなかの長さを割かれています。ほんとにお嫌なのですね。なにか忌避したい程のご体験でも過去になされたのでしょうか。
ことしもたくさん(←お仕事とは言え病的…)の公演をお聴きになりました。そのご評を拝見したいへん勉強になりました。
先生にはベストコンサートはなにでしたか?私にとってはP.ヤルヴィ&パリ管でした。
どうかくれぐれもご健康にご留意され、来年もたくさんの信頼できるご評をよろしくお願い申し上げます。(「死の都」のプログラムにどんな趣向を凝らされた文章をお寄せになるか、今からとても期待し楽しみにしております)
すこし早いですが、良い新年をお迎えになってください。

「ハレルヤ」での起立について

ロンドン駐在中に数回、教会やコンサートホールで「メサイア」を聞きました。「ハレルヤコーラス」では、どの会場でも半数以上の人が起立していました。演奏後には拍手も自然に起きていました。(だからと言って日本人がまねする必要はないと思いますが。)

ハレルヤの起立のお話

東条先生の日記、いつも拝見するのが楽しみです。
以前の日記への書き込みをさせて頂きますご無礼、お許しください。

ハレルヤで起立するかどうか、なかなか面白いお話でした。
私はカトリック信徒でもあり、教会の御ミサにはしばしば預かっております。
このメサイア、教会で演奏される事が作曲当初の目的ではないにしても、聖書をテキストとしている故か、私なんぞは御ミサを受けているように、有り難く聴くこともあります。

ご存知の通り、教会の御ミサではハレルヤ斉唱の際、暗黙の了解で起立する事になっていますが、メサイアのハレルヤ部分で起立する習慣は、こうした宗教的な理由も背景にあると、私は考えています。
改めて、生意気な事を書き連ねまして、お恥ずかしい限りです。
お詫び申し上げますとともに、先生の日記、楽しみにしております。

しきたりを知らんのか」という表情で周囲を睥睨するような態度

今年2017年 の大賀ホール メサイアに行こうと思い、こちらを拝見しました。

東条さんがどんな方なのかも失礼ながら存じず、音楽評論家であることを知った次第です。

両親はクリスチャンで、幼少の頃よりかれこれ50年、クリスマスはメサイアを聴きに行くことが慣例でした。
私も大人になり受洗し、アドベント(教会暦)に入るとメサイアを聞いています。

私は、メサイアでは、一年守られた感謝をこの曲のメシア=メサイアである、主イエスに感謝しつつ聴きます。
ハレルヤは、その言葉通り、主を讃える歌です。
自然と立ち上り、口ずさんでいます。
それを、このように評する人がいることに驚きとショックを受けました。
音楽評論家でいらっいしゃるのならば、宗教曲にはそうした人たちへの思いの配慮があって然るべきではないでしょうか?

はじめまして。たまたまここのブログを拝見しました。
ハレルヤの起立について。わたしはカトリックでもプロテスタントでもありません。自宅でこの曲をかけても起立しないし、生のコンサートでも起立には抵抗があります。音楽鑑賞の延長のつもりです。真剣に聴いています。

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