2024-03

2008・4・14(月)ケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団

   サントリーホール

 18型の大編成で、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」「海」が演奏される。
 これだけの編成で演奏されれば、明晰な抒情の代わりに、壮麗なふくよかさといったものが支配的になるのは当然だろう。音がきれいであれば、それも良い。特に最弱音はふくらみがあって美しい。「海」で弦と木管が囁きを交わす個所など、あたかも泡だったクリームが静かにあふれ出すような趣きだ。金管と打楽器が爆発するフォルティシモでは和音にやや硬さと濁りが生じるが、これは微々たる瑕疵にすぎないだろう。
 前任者デュトワの時代におけるブリリアントな響きを残しつつも、ケントはこのオーケストラに、しっとりとした柔らかい音色を植えつけた。とりわけ和音のバランスの巧みさはケントの腕の冴えというべきであろう。オーケストラのレベルは非常に高い。

 後半は「アルプス交響曲」。優秀なオーケストラで聴くと、さすがにこの作品は、本来の壮大さを蘇らせる。頂上の場面や嵐の場面などでの音塊の密度の高さと完璧な楽器のバランスは、素晴らしい。
 ただ、ケントの表現はかなり淡白であり、「日の出」にしても「日没」にしても、ひどくあっさりした切り口で、これ見よがしに誇張するところは全くない。いわゆる情感の濃さとか深い滋味とかいったものからは無縁の音楽であり、そこが好悪の分かれ目だろう。
 なおバンダはオーケストラの楽員による自前だ。それゆえ、楽員が慌しく出たり入ったりするのが視覚的に少々煩わしい。特に登山の開始されるところとか、森に入ったところとかいう大事な音楽の個所なので、なおさらである。

 アンコールは「ロザムンデ」間奏曲に「さくら変奏曲」、最後に「ファランドール」。最初の曲での弦の柔らかさも、これまた美しさのきわみであった。
   音楽の友6月号(5月18日発売)演奏会評 

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