2023-06

2014・4・29(火)オーギュスタン・デュメイ指揮関西フィルハーモニー管弦楽団

    ザ・シンフォニーホール(大阪)  2時

 音楽監督デュメイの指揮でこのオーケストラを聴くのは、2年ぶり3回目。
 今回は「フレンチ・コネクション」と題され、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、フォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲、ベルリオーズの「イタリアのハロルド」(ヴィオラのソロはジェラール・コセ)が演奏された。

 私の好きなフランス・プログラムだし、それにデュメイのお国ものは如何なる感じなりや、それを演奏する関西フィルも如何なりや、と興味が湧いて聴きに行ったというわけだ。
 結論から先に言うと、出来栄えは、なかなか良い。藤岡幸夫や飯守泰次郎が指揮した時とは全く異なる、織物のような手触りが演奏に感じられて、関西フィルの多様な表現力を認識することができた。

 眼を閉じて聴き始めたら、「牧神」の冒頭のフルートがなにかイン・テンポ(のイメージの演奏)に聞こえてきて、オヤオヤと思ったが、目をあけてデュメイの指揮を見ると、かなり細かく振っている。ちょっと心配になったが、しかしオーケストラは間もなく、そのフルート・ソロを含め、極めてしなやかな表情に変わって行った。
 とはいえ聴いていると、デュメイの狙いはどうやら幻想的な「牧神」よりも、現代風の明晰な、隈取りの明確なドビュッシーを描き出すことにあったように思われる・・・・。

 それは次のフォーレでも同様で、私の好みから言えば、「前奏曲」にせよ「メリザンドの死」にせよ、もう少しふくよかな響きと夢幻的な叙情感があって、そくそくたる哀しみの表現ももっとあったらいいのに、などと思うところではあった。だがデュメイのこの曲における解釈が、そんな過度に甘い情感を抑制するところに在るのなら、それはそれでひとつの主張である。なお、この2作品における木管のソリは、いずれも美しかった。

 「イタリアのハロルド」は、とりわけ劇的な演奏というほどではなかったものの、関西フィルの均衡を備えたアンサンブルが印象に残る。
 ジェラール・コセは、思いのほか抑制した音色と表情でソロを展開していて、それはバイロンの詩に描かれるチャイルド・ハロルドの姿としては、やや物足りなさを感じさせるものだった。

 やはりコセも、標題音楽を劇的に強調することはあまり好まないのかな、あるいは今日の楽器が「鳴らない」のかな、とさえ思わせたが――ところが、彼がアンコールで、「ハロルド」の時よりも2、3歩前に出て、舞台前方いっぱいの位置に立ってバッハの「無伴奏チェロ組曲第2番」の「プレリュード」を弾いた時の、朗々として深みのある豊かなヴィオラの音といったら・・・・。

 それはまさしく名手ジェラール・コセの本来の演奏であり、ホール内のすべてを包み込んでしまうような存在感にあふれていたのであった。かりに彼が「ハロルド」を、そのあたりに近い立ち位置で弾いていたとしたら、もしかしたらこの曲の主人公は、もっと激情的で悲劇的な性格に描かれたかもしれず・・・・。
 しかしその一方、第2楽章の「巡礼の行進」の部分では、デュメイの沈潜したテンポと音量がヴィオラのソロをよく浮き立たせていて、物思いにふけるハロルドの姿をうまく描いていたように思う。

 デュメイと関西フィルは、コンサートの最後にビゼーの「アダージェット」を演奏してくれた。弦楽器群の最弱音が素晴らしい。
 久しぶりに聴いた関西フィル、気持よいものであった。こうなると、6月の飯守泰次郎指揮による演奏会形式「ジークフリート」第3幕も楽しみになる。

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