2024-03

2015・3・16(月)マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団

   サントリーホール  7時

 24日までの計8回公演の2日目。ブラームスもしくはブルックナーの交響曲でプログラムが組まれた今回の日本公演のうち、今日だけがウェーバーの「オベロン」序曲と、フランク・ペーター・ツィンマーマンをソリストに迎えてのシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」が加えられた演奏会である。
 しかも、それら2曲の演奏が、とてつもなく素晴らしく、面白かった。

 特にシベリウス! ツィンマーマンが百花繚乱、千変万化の表情で展開するソロの、まあ何というスリリングなシベリウスだったことか。
 冒頭からして、ざわめく弦の弱音の上に、ヴィブラートなしのまま弾き続けて行くソロの不思議な響き。さながら荒漠たる原野に遠く近く響いて来る角笛のような━━などと言っては突拍子もないイメージに過ぎるかもしれないが、とにかくこのコンチェルトの出だしがこんなにユニークな姿で現れて来たのを聴いたのは、これが初めてである。

 全体に、非常にアクの強い、粘り気のあるソロで、デュナミークの激烈さ、推進性の強烈さも群を抜く。つまり、シベリウスの音楽を北欧の透明清澄な世界から引き離し、強引に己の深い魔性の世界に曳きこんでしまった演奏━━とでも言ったらいいか。
 また、これに対峙するヤノフスキとベルリン放送響の、重い翳りをもった巨浪のごとき起伏の演奏が物凄い。ティンパニを伴った最強奏での怒号など、まさに劇的そのものだ。シベリウスの協奏曲に内在する、思ってもみなかった様相を抉り出されたような気がして、これは度肝を抜かれた演奏だった。

 なおツィンマーマンは、ソロ・アンコールとして、バッハの「無伴奏ソナタ第2番」の第4楽章(アレグロ)を弾いたが、これまたデュナミークの振幅の大きい、非常に大きな表情の劇的なバッハとなった。聴衆だけでなく、オーケストラの楽員からも猛烈な拍手をあびたツィンマーマン、今回はこれ1回のみの日本公演らしいが、更に続けて聴きたくなるといった感のソロであった。

 ウェーバーの「オベロン」序曲の演奏の特徴は、第2部で演奏されたブラームスの「第1交響曲」、およびアンコールで演奏された「第3交響曲」第3楽章とも共通する良さである。
 久しぶりに、良き時代のドイツのオーケストラの伝統を継承した━━とでもいうべき演奏を聴いた気がする。もちろんそれは、古色蒼然としたものではなく、現代の機能的なオケの能力が加味されたものではあるけれども、このしっとりとした、内面に向かって凝縮して行くような、しかも強靭な筋金入りの、そして柔らかく温かみを感じさせるドイツ音楽の演奏は、今やドイツのメジャーなオーケストラからは殆ど聴かれなくなった個性である。
 これがマレク・ヤノフスキという指揮者の個性がつくり出した演奏であることはたしかだが、やはりこのオーケストラ自体にそのような「良き伝統」の香りが引き継がれているからこそ生まれた演奏なのであろう。

 「オベロン」序曲では、がっちりした構築の中に、いかにも妖精の世界にふさわしい軽やかさも滲み出ていた。またブラームスの「1番」は、第1楽章の提示部は反復されたにもかかわらず、全体の演奏時間は40分を少し超えた程度という、かなりの快速テンポで進められていた。ヤノフスキの指揮、すこぶる鮮やかである。

 なにかしら懐かしさと、安堵感を味わわせてくれるウェーバーとブラームスであった。

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