2024-02

2008・5・23(金)ハンス=マルティン・シュナイト指揮神奈川フィル

  横浜みなとみらいホール

 これほどテンポが遅く、しかも最弱音が多用されたブラームスの第3交響曲の演奏も、近年稀だろう。ブラームスのアレグロ・コン・ブリオ(第1楽章)やアレグロ(最終楽章)は、他の作曲家の基準とは全く異なるのだということを主張するかのようなシュナイトの指揮である。
 しかも彼が採った著しく抑制されたデュナミークは、ブラームスが本来この曲のスコアでフォルティシモを数えるほどしか使わず、昂揚個所でも単なるフォルテにとどめている場合が多いことを、そしてピアニシモを予想外に多用していることなどを、改めて私たちに、きわめて正確に示してくれる。つまり、スコアに忠実な指揮なのだ。
 こういう演奏を聴くと、昔ハンス・リヒターが言ったとかいう「ブラームスの英雄交響曲」などという比喩は、およそ見当違いに思えることだろう。しかし、これもまたスコアそのものから引き出された演奏なのであり、それゆえ耳慣れないけれども、大きな説得性を持つものといえよう。

 ただ、このような遅いテンポと最弱音が多用されると、オーケストラは大変だろう。特に金管楽器は、しばしば「入り」の音が不安定になっていた。このあたりは、神奈川フィルのいっそうの切磋琢磨を願わなくてはならない。しかし、基本的には、指揮者のこれらの要求をよくあそこまで持ちこたえたものだと思う。

 プログラムのもう1曲は、ヒンデミットの交響曲「画家マティス」だった。こちらも、スコアの指示を改めて思い起こさせてくれるような演奏だ。それは決して晦渋なものに陥らないどころか、一見謹厳なこの作品の中に潜んでいる劇的な美しさを引き出してくれる。第3楽章では、ブラームスの交響曲での演奏にも聴かれた火花のように鋭いスタッカートや、デモーニッシュな昂揚が、作品の標題的イメージを見事に再現していた。最終個所にはもう一つ盛り上がりが欲しい感もあったけれど、神奈川フィルの演奏はこちらの曲の方が充実していたように私は思う。
  音楽の友7月号演奏会評

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