2024-03

2018・4・20(金)シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団

      サントリーホール  7時

 アイヴズの「ニューイングランドの3つの場所」とマーラーの「交響曲第9番」というプログラム。コンサートマスターは小森谷巧。
 両作品とも、非常に感情の起伏の大きい、デュナミークの対比の激しい演奏となった。  

 特に今日の主力プログラムであるマーラーの「9番」では、かなり遅いテンポが採られ、演奏時間も計88分前後に達していたが、弛緩したところはただの1小節もなく、その入魂の演奏は凄みをも感じさせる。
 読響の機能性の高さと、強大にして壮烈な、しかも豊麗な力感を漲らせる演奏は驚嘆すべきもので、これだけの演奏ができるオーケストラは、わが国では、N響を除けばこの読響あるのみであろう。
 そのような水準までオーケストラを制御するカンブルランの気魄も見事というほかはなく、彼の芸風もまた最近は大きな変貌を示して来ているように思われる。

 この日の演奏では、ホルン群を強奏させる個所が目立っていたが、特に第4楽章第16~17小節のホルンのソロを異様に大きな音で、勢いよく吹かせていたのには驚いた。確かにここは弦と同様にフォルティッシモと指示されているが、大抵は「大きいが、ふくよかな音」で演奏される個所であり、今回のように「決然たる強さで」吹かれたのを聴いたのは初めてである。
 それはそれで一つの解釈だろうが、そのため途中で大きなブレス(息継ぎ)が入ってしまい、このフレーズが「安息感」というより「気負い」のような感にされてしまったのには、この楽章の性格からして疑問がある。
 聞けば、カンブルランはこの楽章を未来への生の希望と解釈しているらしいが、しかしここだけは、この息継ぎはこのフレーズが備えている高貴な性格を損なったものと言わざるを得まい。

 ただしカンブルランは、その他にも同楽章の多くの個所にメリハリをつけて演奏させている。たとえば冒頭第4小節での第2チェロの16分音符や、第56小節と57小節での弦の個所。特に4分音符を(テヌートではあるものの)レガートでなく、明確に際立たせて演奏させていたため、ふつうの演奏ではステージいっぱいに滔々と、全てを呑み込むように拡がる弦の大河の如き響きが、どちらかといえばリアルな、ごついイメージになっていた。それらは、彼岸への憧れより、人生肯定的な感情を意味するものという解釈を可能にするかもしれない。

 最弱音のモティーフが次第に切れ切れになって行き、無限の沈黙へ向かって溶解して行くかのような全曲の終結部は、聴衆の息詰まるような静寂に包まれ、最後まで完璧に演奏されて行った。
 ここでは、良い演奏は、良い聴衆の存在と、その協力により成り立つものなのだ、という例が証明されていたのである。その意味では、聴衆の「聴く」という行為は、単に受け身であること以上に、自らも演奏に参加しているという役割を果たすことにもなるのだ。

コメント

名演でした

先生、いつもありがとうございます。以下、長文にて失礼します。

アイヴズの第1曲で、(前週13日と違って)音の響きがに納得がいき、名演の予感が。
そして、マーラー。久しぶりに、終演後ぜんぶ抜けきってスッと前を向けるような、いい意味で空っぽの心境になりました。最近までオペラ(楽劇)党だった私は、なかなかこのカタルシスの域には達しなかったのですが、やっと、求めていた音楽(演奏)に出逢えた感じです。

私にとってこれがライヴでのマーラーデビューなので、他の演奏との比較はあまりできません。ただ、カンブルランがインタビューで語っていた、死がテーマではなく…という解釈、先生の過去の演奏会評から各CDの口コミまでいろいろな9番評も踏まえ、先生やベテランのみなさまはどう聴かれたのだろう、でもあの、静寂のあとのブラヴォーからすると、良い評価が得られたのかな、と思っていました。

〈拝読して〉ホルンに関する部分は、やっぱりそうか、と思いました。弦は、私もたくましいなと思うところはありました。88分…やっぱり、そんなにかかっていたのですね!

録音されていたので、CDを発売してほしい、と(無謀を承知で)スタッフの方に伝えてきました。感動のあとですが、来月は神奈川フィル、さらにLSO、そして来年も、9番を聴く機会は続きそうです。

9番となると指揮者も取組みが普段以上に集中力と気合が入るのでしょう。楽章が進むにつれて、小森谷CM隣に長原幸太の読響メンバーとカンブルランの緊迫と高揚が伝わり、
最後に全てが終わって音が消えてもその先にまで想いが会場に静かに染み込んでいくようでした。それが聴衆の緊迫の余韻として東條氏指摘の一体感でしょう。

アイヴスの変化に富んだ3つの曲は9番前の豪勢な準備運動にも感じられました

インパルのレニングラード、大野和士のマーラ―3番
ノットのマーラ―10番とブルックナー9番に続きいずれも、手勢を率いて、指揮者と楽員の緊迫した名演を堪能出来ました。


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