2022-05

10・11(土)トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団

  サントリーホール

 トゥガン・ソヒエフ Tugan Sokhiev――北オセチア生れ。日本では今「ソキエフ」と表記されているが、ロシア語読みなら「ソヒエフ」である。たとえば、Khrushchev は「フルシチョフ」であり、「クルシチョフ」とは言わない。Mikhail だって「ミハイル」であり、「ミカイル」なんて言わない。

 とにかく、すばらしい若手が現われたものである――といっても欧州では既に著名な存在だ。31歳の若さながら、トゥールーズ・カピトル国立管弦楽団の音楽監督をもつとめている(来年このオケと来日する)。

 今日のコンサートでも、1曲目の「魔法にかけられた湖」(リャードフ)冒頭から早くも不気味なほど神秘的な音色がオーケストラを満たしはじめていることが感じられた。これを聴いただけでもソヒエフは、「音の響き」へのこだわりを並外れて強く持つ指揮者であることがわかる。プロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲第2番」においても、この曲には意外なくらい、濃厚な色合いというものがオーケストラには漂っていた。

 そして休憩後のショスタコーヴィチの「第5交響曲」では、N響の弦楽器群に、ロシアのオーケストラによくある(昔は東欧のオーケストラにもあったが)あのしっとりして艶っぽい、しかも高音域に一種の透明さを備えた音色が聴かれたのだった。これは、驚くべきことだろう。
 またこの曲では、それまでの演奏で抑制されていた強烈な力が存分に噴出されたが、それが野放図なものでなく、きわめて緻密な制御によって内側に凝縮していくように感じられるところが面白い。演奏には緊迫感が漲っていて、第3楽章での弦のトレモロは物凄い気迫だったし、第4楽章でコーダに入るあたりからの期待感を持たせる構築も巧い。
 アンコールは、プロコフィエフの「古典交響曲」の第3楽章で、この洒落たリズム感と、最後の茶目っ気のある終結もなかなか好い。

 まだ31歳の若さながら、あの我儘な(?)N響をこれだけ縦横に制御するソヒエフの力量は、驚異的である。N響といい演奏をしたからそうだというわけではないが、音楽の造りから予想すれば、この人は大物になるだろう。当節、キリル・ペトレンコといい彼といい、「ロシア系の」若手指揮者には注目株が多い。

 プロコフィエフの協奏曲を弾いたのは、神尾真由子だった。チャイコフスキー国際コンクール優勝からまだ1年しか経っていないにもかかわらず、成長が目覚しい。キラキラする表情が音楽にあふれていて、この作品が明るい陽光の中に輝くかのようである。終楽章の追い込み個所などに、持って行き方の巧さが加われば文句ないだろう。全身で弾く舞台姿には、美しい迫力がある。ただ一つ、あんなに顔をしかめずに演奏してくれればなお好いのだけれど。
 

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