2024-03

2018・11・13(火)サンクトペテルブルク・フィルの「イワン雷帝」

      サントリーホール  7時

 芸術監督・首席指揮者のテミルカーノフが健康を害し、突然来日が中止になったのは痛恨の極みだったが、今回の注目プログラム━━プロコフィエフのオラトリオ「イワン雷帝」(スタセヴィチ編)は、同団の指揮者ニコライ・アレクセーエフにより、当初の予定通り演奏された。

 アレクセーエフは、10年前の新日本フィル客演の際(当時はエストニア国立響のシェフだった)に聴いた時には、かなり豪放な演奏を創る人だという印象を得ていたのだが、今回はまるで別人の如く控えめに、正確に、手堅く、生真面目にこの曲をまとめ上げていたのは意外である。
 曲の中ほど、主人公イワン4世が貴族たちに懇願する場面などではミステリアスな緊迫感を聴かせていたけれども、全体としてはやや平板な演奏になっていたという印象は否定できぬ。御大テミルカーノフだったら、もっとデモーニッシュな雰囲気を創っただろうと思うのだが・・・・。

 しかしとにかく、オーケストラはいい。平板な演奏と雖も、ロシアのオケならではの色彩感と、作品に寄せる共感とがあふれ出ていて、これだけは絶対の強みがある。
 それに今回はニコライ・ブロフによるロシア語のナレーションが付いていたことが、作品の迫力を倍加させていた。このロシア語の語りは、ゲルギエフのCDにもソフィエフのCDにも入っていない(先頃のソヒエフとN響の演奏会ではナレーションが入っていたが、日本語だった)ので、私も今回初めて聴く機会を得たのだが、これが入ると物語が解り易くなり、前述の「貴族への懇願」以降のくだりも含め、音楽だけではあまりピンと来ないところでも、劇的な面白さを味わうことができる。大変有難かった。

 合唱には、東京音楽大学合唱団が出演した。大編成にもかかわらず、クライマックス個所などでは、ロシアの大オーケストラの咆哮に対抗するには、いかにも華奢で繊細な感を免れまい。だが、有名なア・カペラの合唱「タタールの大草原」(「戦争と平和」でも使われた旋律。私の大好きな曲だ)や、終り近くに現われる聖歌「神よ汝の民を守り給え」(チャイコフスキーが「1812年」で使った)などでは、弱音の美しさをよく出していた。これはこれで大健闘だったと思うのだが。

 今回は「フョードルの歌」は浅井隆仁(Bs)により歌われたが、一方アルト・ソロで歌われる「大海原」などを含め、いくつかのカットがあった。また、同じスタセヴィチ版を使用しながらも、指揮者によって曲順も少し異なるようで、今日演奏された曲順は、ソヒエフの指揮したCDより、ゲルギエフが指揮したCDでのそれに近いようであった。

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大阪で拝聴しました

大阪でのプログラムは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、ソリストは、庄司会紗矢香さん。チャイコフスキーの交響曲第5番でした。アレクセーエフさんの指揮は、初めて拝聴しました。実直なお人柄を感じます。素晴らしい演奏でした。テルミカーノフさんのご快復をお祈りしています。

アレクセーエフ氏

アレクセーエフ氏はこのオケの指揮者として首席の片腕として長く活躍していてサンクトペテルブルグ2005年暮のショスタコーヴィチ ジルベスターコンサートでダンス組曲やバレーの曲を演奏していました。一度日本でも再会したいと思っていました。エイゼンステインのこの映画録画しているので再度見てみたい。

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