2024-03

2008・11・14(金)マリス・ヤンソンス指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 来日公演

  横浜みなとみらいホール

 マリス・ヤンソンスは、ほんとうに巧い指揮者になったものだと思う。
 オーケストラとの呼吸が今や完全に合致した状態にあるために、みずからの思い描く音楽をそのまま実現できるようになったこともあるだろう。伸縮自在のテンポ、精妙なアゴーギク、変幻自在のデュナーミクなど、見事に名門コンセルトヘボウ管弦楽団を動かしている。

 ドヴォルジャークの「交響曲第8番」第2楽章での、まるでレチタティーヴォのように自由に表情を変化させる凝った演奏など、以前のマリスからは聴かれなかったものだ。最近の比較的若い世代の西欧の指揮者(その中にはラトルもいる)が古典派以前の作品でよくこの手法を使っているが、60歳代半ばに達した(1943年生れ)のマリスが、しかもドヴォルジャークの交響曲でこれを成功させているのだから面白い。

 しかも、その芸の細かいこと。
 第2楽章第47小節以降で下行を繰り返すヴァイオリンの16分音符の後半部分のテンポを僅かに走らせ気味にして洒落た変化をつけたり、第3楽章最後で管から引き継ぐ弦の頭にアクセントをつけて小気味よい味を出したり、第4楽章冒頭のトランペットのファンファーレを受けたクラリネットの低音に見事なエコー効果を感じさせたりと、枚挙にいとまがないほどだ。
 また第4楽章で、フルートがあの「ドライ・ボーンズ」的に降りて行くところ、第135小節のロ音と第139小節の変ロ音をちょっとクレッシェンド気味に延ばさせ(マリスは奏者に左手で大きく掬い上げるようにして指示を送っていた)、次のフレーズを引き出す明快な役割を与えていたあたり、何と巧いのだろうと舌を巻いてしまう。
 第3楽章に満ち満ちていた哀感も、実にすばらしいものだった。オーケストラが、また上手い。

 こういう演奏に接すると、時差ボケ(朝帰国)も完全に吹き飛んでしまう。
 プログラム後半は、R・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」と、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」。

 その2曲のうちでは、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」が面白かった! 冒頭、「渦巻く雲の切れ目からワルツを踊る人々の姿が見えてくる・・・・雲が晴れると、そこは明るいシャンデリアに輝くウィーンの宮廷の・・・・」といったような作曲者の解説はここでは用を為さず、雲はいつまでも晴れてこないような響きが続く。
 全曲の演奏も意外性の連続で、ありふれたストレートな演奏スタイルに比べると、すでにデフォルメに近い。が、全体の響きはまさに「近代音楽家」ラヴェルそのものであり、時にプーランクのそれを予告するような怪奇な陰翳も聴かれたのである。自由奔放、かつ魁偉で深淵のようなものを感じさせる「ラ・ヴァルス」の演奏だったが、もしかするとこれこそが、当時のラヴェルの真の心象風景だったのではなかろうか。
 

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