2024-02

2006・4・17(月)ザルツブルク日記(終)「ペレアスとメリザンド」

     ザルツブルク祝祭大劇場 6時30分

 薬のおかげで体調もかなり改善。昼間は寝る。とにかく今回は、これまでの取材旅行の中でもかつてない最悪最低の状態だった。

 今日はイースター・フェスとの最終日で、ラトルが指揮するドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」である。演奏はもちろんベルリン・フィル。演出はスタニスラス・ノルデイ、舞台美術はエマニュエル・クロルス、照明はフィリップ・ベルソメイ。

 舞台装置は、前半では大きな角型の箱が多数、時に移動する。この箱が左右に開くと枕やドレスなどのデザインが均等に散りばめられ、それが背景になる場面もある。洞窟の場面では大きな3面の屏風のようなものに一人ずつ人物が描かれており、それが照明により浮き出すのが美しくも不気味である。窓辺の場面ではメリザンドの真紅のドレスが無数に並ぶ中に彼女が立つ。
 ゴローとイニョルドが前景で大騒ぎしている間、その背景ではペレアスとメリザンドが向き合って端然と椅子に座している。ここでは2人はまるではめこみ彫刻か絵画のように見える。
 この装置はなかなかセンスがいい。どの場面もそうというわけではないが。後半では吊りが多用される。真紅の、モダンな彩りを施した吊りが上げられると、その後からゴローが入ってくるという按配。

 ペレアスのサイモン・キーンリイサイド、メリザンドのアンゲリカ・キルヒシュラーガーは文句のない出来だし、ジェラルド・フィンレイから代わったローラン・ナウリのゴローは悲劇的なキャラクターを打ち出して出色の出来。
 アルケルのロバート・ロイドにはいつもながら重厚な風格と滋味がある。妻を罵倒する息子を制止する瞬間の「ゴロー!」と絞り出すような悲痛な声の歌唱の見事さは、永遠に忘れられないだろう。

 サイモン・ラトルとベルリン・フィルは、かなり硬質だ。この作品で(!)最強音を出すことがかなり多い上に、それが悉く鋭い響きなのである。昨年の「ピーター・グライムズ」ではその壮大な響きが作品からシンフォニックな面における個性を引き出したが、何しろ今年はドビュッシーである。少々うるさかったと言わねばならぬ。
 ドビュッシーだからこうあらねばならぬといった狭い受容をするつもりはないが、フォルテやフォルティッシモがあんなに鋭角的な響きでは、やはり度が過ぎるだろう。ただそれでも彼らは、第5幕冒頭のように、羽毛のようにやわらかい最弱音を出すことだってできるのだ・・・・。しかもその音は、彼が就任した頃の「海」などに比較すると、格段に美しくなっているのである。

 終演は10時頃。やや疲れたが、先生たちの薬のおかげで、体調は大方回復した模様。翌朝、フランクフルト経由で帰国。

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