2024-03

2004・4・25(日)飯森範親指揮東京交響楽団

     新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ  5時

 日帰りで、東響の新潟定期を聴きに行く。

 プログラムの後半は、マーラーの大作「交響曲第5番」。作曲者が最晩年に行なった「最終改訂稿」をもとに国際マーラー協会がまとめた「2002年校訂版楽譜」(ペータース社出版)が使用されての演奏である。この改訂は、これまで一般に演奏されていた楽譜に対し、曲全体の構築に変化を及ぼしているわけではないが、ダイナミックス(音の強弱の変化)や楽器編成には無数といえるほどの手が加えられている。

 たとえば第5楽章において、旧版ではコントラバスと共通の動きをしていたファゴットがチェロと同一の動きに変更されたり、弦の主題の背後にあった4本のホルンのパートが削除されたりしたことなど。今回の演奏で感じられたオーケストラの音色の明晰さは、それらの点に因るところも多いだろう。

 しかし、やはり称賛されるべきは、飯森範親のめりはりに富んだ指揮と、東京交響楽団のしなやかで雄弁な演奏である。
 ドイツのヴュルテンベルク・フィル芸術監督も兼任するこの若い気鋭の指揮者は、もともと筋肉質とでもいうべき力感を備えた音楽の持ち主でもあったが、近年の進境さらに著しく、同じマーラーの交響曲を手がけても数年前の「第3番」に比べ、はるかに精妙な表情とスケールの大きさを増した。第4楽章(アダージョ)での精妙で清澄な叙情性、第5楽章での緊迫感など、傑出した指揮ぶりといえよう。

 そして東響の演奏も、前夜のサントリーホールでのこの曲の演奏に比べ、いっそう流れのよいものになっていた。首席ジョナサン・ハミルと、彼が率いるホルン・セクションは相変わらずすばらしく、その豊麗さは、今や東京のオーケストラの中でも随一といっていいかもしれない。トランペット首席アントニオ・マルティの全曲冒頭のソロも輝かしく、その後に続く演奏の潮流を見事に先導した。

 プログラム前半は、トルコ出身のファジル・サイを迎えてのモーツァルトの「ピアノ協奏曲第23番」。この才人にしては妙に慎重な演奏であり、正直言って期待外れだった感がある。3日前に大阪で演奏したベートーヴェンの「第3協奏曲」での自在な表現と、カデンツァで披露したような大胆奔放な即興演奏とを、モーツァルトの協奏曲でならもっと聴けると思ったのだが。
 アンコールでのサイの自作「ブラック・アース」の方に大拍手が集まったことからみると、聴衆のみなさんも同感だったのでは?                                   (「新潟日報」掲載批評より転載)

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