2024-03

2020・8・30(日)メノッティ:「アマールと夜の訪問者」

      東京文化会館小ホール  3時

 「東京文化会館オペラBOX」と名づけられたシリーズの今年は12回目。上野中央通り商店会が提供、歌手陣には東京音楽コンクール入賞者を主力として起用するという特徴がある。いずれも結構な趣旨だ。

 メノッティの「室内オペラ」的な作品は、このホールの小さなスペースにも合うだろう。むしろインティメートな雰囲気を醸し出して、理想的な場であると言えるかもしれない。
 岩田達示の巧みな演出は、このヒューマンなストーリーを持ったオペラに相応しい、実に温かくて微笑ましい空間をつくり出していた。

 舞台上には、母親(山下牧子)とアマール少年(盛田麻央)が暮らすあばら家があり、東方から来た3人の王(小堀勇介、高橋洋介、久保田真澄)および従者(龍達一郎)や、羊飼いたち・村人たち(コーロ・パストーレ、リトルシェパーズ)は客席を通って登場する。
 フェイスシールドを付けてはいるものの、衣装と扮装はしかるべく整えられているので、違和感はさほど感じられない。演技も綿密に設定されており、特に「3人の王たち」はコミカルな演技やダンス(!)も交えて観客を楽しませる。
 ただ、演技そのものは抑制しつつも最も存在感と滋味を示したのは、母親役の山下牧子ではなかったかと思う。

 群衆の歓迎の踊りは牧歌劇風の味わいを出し、ラストシーンでアマールが背負った松葉杖が十字架を思わせる形になっていたのも気が利いているだろう。

 音楽の面では、どの歌手たちも、歌唱面では異論を差し挟む余地のないほど快演を聴かせてくれていたし、その歌唱を、下手側舞台下に配置された園田隆一郎の指揮する小編成のアンサンブルが親しみやすい雰囲気で支えていた。
 小規模ながらも、極めてまとまりのいいプロダクションであり、コロナ禍と猛暑とに苛立つ観客の心を温かく慰めてくれるような上演であったと言えよう。東京文化会館の成功作である。

 なお、オペラの上演に先立ち、40分ほどの「オープニングトーク&セッション」と題して、朝岡聡の司会により園田隆一郎と岩田達示がメノッティやバーバーの音楽について語り、富岡明子、寺田功治、高橋裕子による演奏が加わるコーナーもあった。

コメント

フル規格オペラを!

近年我が国では、オペラの老舗である二期会や藤原の看板を掲げないプロダクションの方が、レベルが高い気がします。各ホールの制作者の技量が上がっていること、無所属歌手が増えていること等が原因でしょう。
東京文化会館制作のグランドオペラが毎年観たいです。もちろん大ホールで!

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中