2024-03

2021・5・26(水)新国立劇場 ヴェルディ:「ドン・カルロ」

      新国立劇場オペラパレス  2時

 ワクチン初回の副反応報告その2。接種当日夜の筋肉痛だけで済んだと思いきや、翌日夜になって眠気、眼の乾き、ほてり感、倦怠感などが起こり、昨日(接種後3日目)は午後になって突然発熱(37度2分まで)。聴きに行く予定だった読響に欠席のお詫びのメールを入れ、夜までおとなしくしていたら、次第に平熱に戻って行った。
 接種の際に厚生労働省から配られた「注意点」を読むと、接種後数日以内に現れる可能性のある症状として、「接種部位の痛み、疲労、頭痛」が50%以上、「筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、部位の腫れ」が10~50%、「吐き気、嘔吐」が1~10%、とあるし、ある病院が発表したデータによれば、接種後2日目か3日目に「ほてり感」や「眼の異常」などが現れる症例もあるとのこと。いずれにせよ、1回目と2回目、あるいは年代などによってかなり差異が生じていることは確かだそうで。

 「ドン・カルロ」4回公演のうちの3日目。2006年9月にプレミエされたマルコ・アルトゥーロ・マレッリ演出・舞台美術によるプロダクションで、その後2014年に再演され、今回が3度目になる。「フォンテンブローの森」の場面は入っていない4幕制の版である。

 今回の演奏はパオロ・カリニャーニ指揮の東京フィル、新国立劇場合唱団、主な配役はジュゼッペ・ジパリ(ドン・カルロ)、高田智弘(ロドリーゴ)、小林厚子(エリザベッタ)、アンナ・マリア・キウリ(エボリ公女)、妻屋秀和(フィリッポ2世)、マルコ・スポッティ(宗教裁判長)、大塚博章(修道士)、松浦麗(テバルド)、城宏憲(レルマ伯爵)、光岡曉恵(天よりの声)。

 マレッリによる演出と舞台の詳細については、前回の上演の際に書いた(→2014年11月27日の項)。
 とにかく、ドラマとしての演技━━という点ではほとんど観るべき趣向はなく、恰もセミステージ形式上演にも似たつくりなので、ドラマとしての面白さはむしろ音楽から生まれるだろう。その点、今回はカリニャーニの劇的な指揮に救われたところが多かった。演奏の緊迫感、熱っぽさなどはこの人のオペラ指揮の美点だ。このオペラでは登場人物による対決シーンが連続するという特徴が目立つが、それらがすべて見事に描き出されていたのは、第一にこのカリニャーニの手腕ゆえと言えよう。

 東京フィルは珍しく金管群が咆哮してドラマティックな扇情感を噴出させていた。ただ、それはそれでいいのだが、そうなると一方で弦の響きの乏しさがいっそう気になって来る。「ドン・カルロ」の音楽は、本来はもっと分厚く豊麗なものであるだろう。ただし、フィリッポのアリア「独り静かに眠ろう」でのチェロのソロは、なかなかにエスプレッシーヴォが豊かだった。

 歌手陣では、最も安定して傑出していたのは、予想通り高田智弘である。張りのある劇的な緊張感を備えた声による歌唱は、ロドリーゴを強靭な意志と革命思想の持主として鮮やかに表現していた。国王との口論場面、カルロを説得する場面など、息を呑ませる迫力であった。単なる我儘王子としか見えぬドン・カルロの代わりに死なせるにはもったいないと本気で思わせてしまうほどの存在感であり、今回の上演ではカリニャーニと並ぶ立役者に数えられる。

 エリザベッタの小林厚子も期待を裏切らず、好い歌唱を聴かせた。先日のジークリンデ(新国立劇場「ヴァルキューレ」)に続く大ヒットである。アリア「世のむなしさを知る方」での細部の仕上げや、王妃としての苦悩の表現などという面ではこれからの研鑽を待ちたいと思うが、とにかくいいソプラノが出て来たものだ。

 国王フィリッポ2世の妻屋秀和は、このところ大きな代役を立て続けにこなして大活躍だが、持ち前の貫禄でこの「苦悩する王」を見事に歌い演じていた。この人は所謂「悪役」的な雰囲気が薄いので、フィリッポ2世の専制君主的な悪辣さを表現するには物足りない面もあったが、何か温かい情感を見せてくれる国王としてはすこぶる魅力的なものがあるだろう。

 エボリ公女役のキウリは、すでにかなり広く名の知られた中堅どころのはずだが、不思議に歌い方が少し粗く、しかもその中で頂点を強引に決めて行くという傾向があるのが気になった。宮廷勤めの公女にしては少しラフだな、というところである。
 題名役のジパリは、歌唱の面では途中から調子を上げて行ったものの、演出による性格表現にもよるだろうが、あまり存在意義のはっきりしない王子という、このオペラでの役割を具現したようなドン・カルロになってしまっていた。周囲の登場人物群があまりに個性的なので、肝心の題名役は大抵影の薄い存在になってしまう、というこのオペラのストーリーの欠点のワリを食ってしまったようである。

 途中休憩30分を含み、終演は5時半過ぎ。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中