2022-05

2021・7・21(水)飯守泰次郎指揮読売日本交響楽団

       サントリーホール  7時

 コルネリウス・マイスターが来られなくなったので、飯守泰次郎が替って指揮。プログラムも変更になり、モーツァルトの「交響曲第35番《ハフナー》」と、ブルックナーの「交響曲第4番《ロマンティック》」が演奏された。

 飯守泰次郎が読響の定期に登場したのは、何と1974年7月15日以来のことだという。その時に指揮したのは、演奏記録を見ると、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは海野義雄)と、このブルックナーの「4番」となっている(私は、その演奏会は聴いていなかったが)。

 爾来47年と6日ぶりに、その因縁の「ロマンティック」で登場した飯守泰次郎。
 この人の指揮は、最近何か凄みを増して来ている。一種のデモーニッシュな力が、その指揮から引き出される音楽には漲っているようだ。指揮者は、病気から蘇ると、その音楽に俄然深みが増す━━という例は少なくないが、彼の場合にもそれが当てはまる。
 特に今日の演奏で印象的だったのは、読響という重量感たっぷりの、厚みのある密度の高い響きを出すオーケストラとの演奏ゆえに、飯守泰次郎の世界がいっそう巨大な風格を以て現出していたことである。

 最大の頂点がスケルツォ楽章の終結部で築かれてしまい、第4楽章の終結部がそれを超えるまでには僅かに及ばなかったような━━という感がなくもなかったけれど、とにかくこれは、最近の飯守泰次郎のブルックナー演奏の中では、ひときわ風格を以て聳え立つ豪演だったことは間違いない。
 今日のコンサートマスターは日下紗矢子。

コメント

飯守先生の指揮

   宇野功芳氏が、シューリヒトとクナッツパーツブッシュのブルックナーを比較して、モーツァルト指揮者とワグナー指揮者の違いに言及していました。シューリヒトをモーツァルト指揮者とは思いませんが、なるほどと思いあたる点もありました。昨晩は、ワグナー指揮者・飯守先生のモーツァルトとブルックナー、素敵な夜でした。
  先生の体調は良さそうでした。歩行はスムースで、堂々と出てこられました。指揮台には腰掛がついていましたが、楽章間でちょっと腰をおろしてハンカチで汗を拭われる他は、全曲を直立して指揮されました。右手で拍を正確に刻みつつ、左手では細かい指示をたくさん出されました。それに読響のメンバーがよく応えていたと思います。
   ハフナーは、強弱のメリハリがきいた心地よいテンポの演奏でした。ブルックナーの4番で、弦楽器は増えた(コントラバスが4挺から6挺)けれでも、いつもの大交響曲よりは小さい編成。この編成からこんなに大きな音が引き出されホールに満ちるのは、ワグナー指揮者の本領発揮といったところでしょうか。
   僕は、特に、1楽章の綿密な演奏に感動しました。全楽章で大きな音に酔う感じがしました。「豪演」という東条先生の一言にも賛成です。演奏終了直後から何人ものお客が起立して拍手しました(僕もその一人)。先生もうれしそうに答礼されました。

御年80歳の飯守さんは最近体調がすぐれないと仄聞したことがありますが、まさに命を削ったような演奏でした。ワーグナーの時は忙しいので券が買えず、飯守さんを聴くのは昨年秋の日フィル以来です。読響の弦や木管はビロードのように美しく、今やN響を追い越さんばかりの高みです。即興性を重んじてゲネプロと違うことをするマエストロのようなので、日下さんが飯守さんを注意深くウオッチしながら全体にシグナルを送るさまが、私の席からはよく見えました。ほぼ初のなれない共演なので、金管の精度に齟齬はわずかにありましたが、巨匠時代をほうふつとさせる全体の大きなうねりに圧倒され、数日前のノットさんの温かくも精妙なドン・キホーテとシベリウスを忘れるほどでした。忙しくなりそうな気配なので確実に遠い川崎のサマーミューザは行けないでしょうから、時間をつくってサントリーホールに行ってよかったです。世の混乱と危機感を忘れるひとときでした。来日公演が極端に少なくとも、日本人だけで奥深い音楽が聴けるのは思わぬ発見で、日本のクラシック界はレベルが上がったことを再認識しました。81歳になられる小林研一郎さんもそうですが、朝比奈隆さんのように、時代遅れといわれようと、飯守さんにも、長生きしていただき、昔ながらの熱いロマンを聴かせ続けていただきたいと祈ります。

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