2024-02

2022・2・8(火)ユベール・スダーン指揮札幌交響楽団東京公演

      サントリーホール  7時

 北海道の大雪を衝いてよう来てくれた、という感の札響。聞けば、オーケストラは昨日のうちに東京に来ていたのだとか(宿泊費など費用が嵩んだのでは?)。

 今回は、来日できなかったマティアス・バーメルトに代わり、ユベール・スダーンが客演指揮した。ただしプログラムは変更なしで、ベルリオーズの「ロメオとジュリエット」からの「愛の場面」、伊福部昭の「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」(ソリストは山根一仁)、シューマンの「交響曲第2番」。コンサートマスターは田島高宏。

 スダーンが札響からどんな音を引き出すか、興味津々だったが、最初のベルリオーズでの弦の透明な美しさには驚嘆した。そして、一つ一つの音や和声が、実に丁寧に、細密に響かせられている。
 これはもう、完璧なスダーンの音である。彼が音楽監督を務めていた時期の東響は、シューベルトやシューマンなどのロマン派の作品でこういう音色を出していたのを思い出す。スダーンは、それを早くも札響に注入したことになる。今日の東京公演に先立ち、札幌でも2日間の定期でこのプログラムを演奏してはいたはずだが、それにしても客演指揮者の立場に過ぎぬ彼が━━いや、札響の柔軟な姿勢にも注意を向けるべきであろう。
 「愛の主題」の昂揚個所での弦の透徹した響きなど、私はこれまで札響から聴いたことはなかったように思う。

 ただし一つ、スダーンの解釈に疑問を言わせてもらうなら、その2回の頂点で4本のホルンを異様に強奏させたのは、演奏全体の均衡を崩す結果になっていたのではないか、ということ。

 続く北海道出身の伊福部の作品では、札幌市出身の山根一仁がソリストを務めるという念の入れ方だ。だが彼は、この作品を驚くほど情熱的に弾いた。それはしばしば息を呑ませるほど野性的な激しさに富んでいて、作品を単調な音の繰り返しになることから救っていた。
 指揮者のスダーンが伊福部の独特な音楽の個性をどう考えていたかは分からないけれども、とにかくあの「伊福部節」が、今日は珍しいほどカラフルに仕上げられていたのは確かであろう。

 シューマンの「第2交響曲」は、まさにスダーン色に染められた演奏だった。弦の透徹した響きもさることながら、管楽器群のトゥッティの音色は、不思議な色彩を備えた独特のものである。音楽全体の構築は、流麗な要素は一切退けられ、極度に角張ったものになっている。スダーンは、東響とのシューベルト・ツィクルスの時に、初めてこういうサウンドをつくり出していたのだ。
 今回は客演の指揮でありながら、早くも札響にこのような特殊なバランスの音色を注入してしまったのだから、その統率力もたいしたものだが、その一方、札響の柔軟性もまた見事なものと言うべきであろう。

 シューマンの精神的な不安定をあからさまに反映させたようなこの交響曲において、スダーンは第2楽章の終結で「狂おしい興奮」を出現させ、また第3楽章では一般に演奏されるような陶酔的な雰囲気とは異なり、安息の中にも苛立ったような感情を描き出していた。そして、第4楽章後半の追い込み個所では、音楽の内的エネルギーの昂揚といったものを如実に感じさせたのであった。

 総じて、かなり個性的な音づくりなので、聴き手側でも好悪が分かれるだろうが。私は彼の指揮を強く支持する。それはまた、札響の思わぬ多様な面を知ることができたという慶びでもある。札響の柔軟な幅広い能力に感嘆するとともに、これまで聴いた札響の演奏の中で、最もユニークで、しかも屈指の出来であったと讃えたい。

コメント

素晴らしい演奏でした!

前半の山根さんの伊福部昭も印象に残る名演でしたが、とにかく後半のシューマンが素晴らしかった。この2番、シューマンの交響曲の中で一番好きな作品であり、演奏会でとりあげられる機会があれば極力足を延ばすようにしているのですが、なかなか満足できる演奏に巡り合うことができません。今回の札響の演奏は、まずアンサンブルが最上、指揮者の意図が隅々にまで伝わっており、さらに弦と管のバランスが絶妙でスコアが透けて見えるようでした。敢えて言うなら、フィナーレで低弦パートがもっと自己主張してほしいと思いましたが、それも小生の席の場所の関係だったかもしれません。いずれにせよ、小生にとってこれまで接したシューマン2番の実演の中で最高の演奏だったと言っても過言ではありません。1月の名フィル東京公演に続き、地方オケの実力の凄さを知ることができました。3月の群響東京公演も楽しみです。

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