2024-03

2022・3・13(日)広上淳一、京都市交響楽団常任指揮者最終定期

      京都市コンサートホール  2時30分

 14年間という、京響シェフとしては異例の長期にわたった広上淳一の常任指揮者在任期間も、ついに終りを迎えた。

 最終定期を飾るプログラムとして、当初はマーラーの「第3交響曲」が予定されていたが、コロナ警戒のため少年少女合唱団の参加が不可能となり、代わりに尾高惇忠の女声合唱曲集「春の岬に来て」から「いしのうへ」と「子守唄」(合唱は京響コーラス)、マーラーの「リュッケルトの詩による5つの歌曲」(ソリストは藤村実穂子)及び「交響曲第1番《巨人》」が演奏された。コンサートマスターは石田泰尚。

 メインのプログラムが終了すると、カーテンコールの中で広上が感謝と告別のスピーチ(かなり長い)。次いで、退任する2人のオーケストラ楽員への花束贈呈(これにも挨拶がつく)が行なわれたあと、今度は広上への花束贈呈があり、彼自身の肖像画が彼に贈られることも発表された(肖像画はこれから製作するので、今日はとりあえず目録だけという挨拶があり、場内爆笑)。
 常任指揮者を送り出すセレモニーが、満員の聴衆を前に、これだけアットホームな雰囲気の中に行なわれた例は、珍しいだろう。広上が如何に敬愛されていたかを表すものではなかろうか。そして最後にもう一度アンコールとして尾高の「子守唄」が演奏され、演奏会は5時過ぎに終った。

 リュッケルトの歌曲では、藤村実穂子の深々としてスケールの大きな歌唱が圧巻であった。これだけ深みのある歌唱を聴かせてくれる日本人歌手が他にいるとは思えない。「第3交響曲」だったら彼女の出番はこれより短いから、この曲に関する限りは、プログラム変更が幸いだったことになるだろう。

 そして、「巨人」。━━広上と京響が「巨人」を演奏するのを聴いたのは、あの8年前の超弩級の東京公演(☞2014年3月16日)以来、2度目になる。
 音符の一つ一つに神経を行き届かせた演奏という点ではあの時と同じだが、他方、8年経った今回のそれは、テンポを流動させて激情を爆発させる劇的な演奏スタイルではなく、全曲を通じて落ち着いた明るさ、アンサンブルの良さ、音の美しさといった要素が強くなっていた。

 第4楽章ではテンポがゆったりと採られ、爆発点すらヒステリックにならない。全体に完璧といってもいいほどの見事な均衡が保たれている。それは広上がスピーチの中で京響を讃えて言った「やわらかく、あたたかい音が実現できた」という言葉通りの演奏だったのである。

 京響の歴史の中で、広上の常任指揮者時代ほど、演奏の水準が高まった時期はなかったであろう。私もほぼ50年にわたって京響を聴いてきたが、それを実感している。彼の功績は、言い尽くせぬほど大きいものがある。
 因みに広上は、本人の希望により、特に桂冠指揮者とか名誉指揮者とか言った称号は受けぬ由。但し、京都コンサートホールの館長は、今後とも続けるのだそうだ。

コメント

マエストロ広上

前日の同プログラムを拝聴しました。14年間の集大成、なんだか切なくて、ずっと聴いていたかった!やわらかく、あたたかい響き。広上さんのお人柄を感じる指揮ですね。京響さんは間違いなく、トップオーケストラのひとつです。広上さんのご尽力に感謝です。ちなみに、10月1日に、大阪のザ.シンフォニーホールで広上さん指揮の京響大阪特別公演があるそうです。楽しみです!

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