2024-03

2022・3・20(日)大植英次指揮日本フィルハーモニー交響楽団

      東京芸術劇場コンサートホール  2時

 メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(ソロは小林美樹)と、マーラーの「交響曲第1番《巨人》」。コンサートマスターは木野雅之。

 マーラーでは、久しぶりで濃厚極まる「大植節」を聴いた感。ひと頃の個性的な、自己主張を前面に押し出す大植英次が、また復活して来たようだ。テンポもあの頃と同じように、遅い。演奏時間は、第1楽章提示部のリピートなしにもかかわらず、なんと60分に達していたのである。
 マーラーの指定よりもさらに頻繁にリタルダンドが繰り返される。瞬時の「矯め」も至るところに現れるが、それはまるで、隣を一緒に歩いて来た人が突然ふっと見えなくなるような気持にさせられる演奏だ。

 日本フィルがこの千変万化、変幻自在のマーラーを実に見事に具現していたことには舌を巻いた。第1楽章など、いくつかの個所では躓いたり、のめったり、ぐらりとする瞬間もなくはなかったが、後半2楽章では、完璧なほどに大植の音楽に応えていた。
 音も豊麗で、たっぷりとした巨大な量感にあふれている。そうした響きで演奏されたあの第3楽章の怪奇な雰囲気たるや驚くほどで、私がこれまで何十回と聴いて来たこの楽章の演奏の中でも、ひときわ異彩を放つものであった。日本フィルの最近の好調さを余すところなく示した演奏と言えたであろう。

 この楽章での冒頭のコントラバスのソロ(高山智仁)と、間もなく入って来るオーボエの主題の最初の不気味なクレッシェンド(杉原由希子)も絶品というべく、この2人にはこの個所の演奏だけでも殊勲賞をさし上げたくなったほどだ。

 大植の指揮は、90年代のミネソタ管時代のストレートで爽やかなスタイルから、バイロイト以後の超個性的なスタイルを経て、ここ数年は比較的穏健な指揮スタイルになっていたのだが、私には、それはまた些か個性を欠いた指揮のようにも感じられていた。
 今回の「巨人」での指揮が、彼の自己主張が蘇ったことの顕れなのか、それともマーラーの音楽ゆえに特別にそうなったのかは判別し難い。が、いずれにせよ私にとっては、今日のような指揮の方が、大植英次らしくて面白い。

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