2024-02

2022・3・30(水)東京・春・音楽祭「ローエングリン」初日

       東京文化会館大ホール  5時

 2019年の「さまよえるオランダ人」上演のあと、新型コロナ蔓延のために中断されていた「東京・春・音楽祭」のワーグナー・ツィクルスが、3年ぶりに再開された。

 このツィクルスは、あとひとつ「トリスタンとイゾルデ」を乗せれば、ワーグナーのスタンダード・レパートリー全10作の上演が完成するところまで進んで来ているのだが、今回は2018年に上演された「ローエングリン」の再演であり、来年はまた「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の予定だというから、ワーグナーものはまだ続けられるようだ。
 われわれワグネリアンにとっては結構な話だが、それ以外の好みのお客さんにとってはどんなものか。R・シュトラウスなんかいいんじゃないか、などという話もロビーではチラホラと。

 さて今年の「ローエングリン」。再演とはいっても、前回(☞2018年4月5日参照)と異なり、背景の映像演出を止め、スクリーンを廃止して、通常の反響版を設置した純粋な演奏会形式上演に切り替えられている。だが、これで随分音響がよくなり、音楽が聴きやすくなっていたのは確かである。

 演奏者も、指揮と主役歌手陣の多くが一新された。今回は、マレク・ヤノフスキ指揮のNHK交響楽団、東京オペラシンガーズ、ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(ローエングリン)、ヨハンニ・フォン・オオストラム(エルザ)、エギルス・シリンス(テルラムント)、アンナ・マリア・キウリ(オルトルート)、タレク・ナズミ(ハインリヒ王)、リヴュー・ホレンダー(布告官)、大槻孝志・高梨英次郎・後藤春馬・狩野賢一(以上ブラバントの貴族)、斉藤園子・藤井玲南・郷家暁子・小林紗季子(以上小姓)という顔ぶれだ。コンサートマスターは、キュッヒルではなく、今年は白井圭。

 以前のウルフ・シルマーと同様、いやそれ以上に、ヤノフスキもテンポが速い。第3幕の「遥かな国に」と「白鳥だ!」の間の長い合唱と重唱をノーカットで━━ここはドラマの上で不可欠な個所なので、称賛したい━━演奏しながらも、演奏時間が60分だったというのは、彼のテンポの速さを物語るだろう。

 だが、そのテンポでたたみかける緊迫感と迫力は、すこぶる見事だった。特に第2幕は、もともとワーグナーの中後期の作風を先取りする陰翳と起伏に富んだ劇的な音楽なのだが、そこでのヤノフスキの引き締まった指揮は見事で、この日の演奏の白眉であった。
 第1幕は全体に多少ガサガサした音楽づくりで、全体に硬い感があったものの、第2幕からは全員が調子を上げて行った。

 ローエングリンのヴォルフシュタイナーは、前半では少々頼りない中年の騎士といった風情だったが、第3幕の大見得で猛烈な馬力を出した。エルザのフォン・オオストラムも幕が進むごとに良くなっていったから、2日目(4月2日)では冒頭から飛ばしてくれるだろう。

 シリンスは、前回同様の安定していたテルラムント。またオルトルートのキウリは、昨年の新国立劇場の「ドン・カルロ」(☞2021年5月26日)でエボリ公女を歌っていたのを聴いて以来だが、今回の方が役柄の性格上、ずっと映えていただろう。このオペラはオルトルートの存在感次第で決まるドラマなので、その点では前回のぺトラ・ラングには及ばずと雖も、キウリも充分に責任を果たしていた。ナズミの国王は、声に力がある。

 合唱の東京オペラシンガーズは、ステージ奥に定石通り配置されていたが、前述の反響板設置のおかげでバランスよく、力に満ちて響いていた。
 バンダは大部分がステージ上手の前面近くに配置され、なかなかの力感。N響も反響板を利用して楽々と鳴る。木管が非常に強く響かせられていたのは、ヤノフスキの好みなのか? 第1幕前奏曲での弦の音色の硬さには驚いたが、これが第3幕のエルザとローエングリンの対話の場面になると、きわめて柔らかい官能的な音色に変わっていたのが印象的であった。
 30分の休憩2回を含み、9時20分終演。

コメント

お疲れ様です。
4月2日の会です。概ね東条先生仰る通りですので、付け加えることは多くありません。
それにしても、2幕のオルトルートとエルザのやり取りから幕切れまでは、息をのむ素晴らしさでした。さして高名とは言えない歌手達がここまで聴かせるのだから、改めて、世界は広いです。

今年は、行けずに残念でした

今年は、東京春祭のワーグナーを聴き逃してしまいましたが、前回のローエングリンに比べて、音響が良くなったと伺い、残念な思いです。前回は、演奏前に体調不良とアナウンスのあった、フォークトは、尻上がりに良くなり、ラングの歌唱は、絶品でした。また、前回、奏者の人選ミスと思われる管楽器や打楽器の考えられないような演奏は、ヤノフスキーの指揮では、許されなかったでしょう。来年のコンサートが楽しみです。

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