2024-03

2022・4・1(金)東京・春・音楽祭「ベンジャミン・ブリテンの世界」

      東京文化会館大ホール  7時

 加藤昌則の企画と構成による。彼のステージでの解説はすこぶる明解なので、楽しめる内容になっている。
 今日は前半に「民謡編曲集」が歌われ、後半にはオペラ「ノアの洪水」が演奏会形式で上演された。なかなか面白い。この音楽祭の声望を高める企画の一つと言っていいだろう。

 「民謡編曲集」では、「サリー・ガーデン」「かわいいポリー・オリヴァ―」「とねりこの木立」「ニュー・キャッスルから来たのでは?」「ディー川の水車屋」「木々は高々と育ち」「谷の小川」の7曲が、波多野睦美(S)と加藤昌則(解説及びピアノ)により演奏された。1曲のみ、辻本玲(vc)も参加している。字幕付なので、内容が解り易いのも有難い。

 メイン・プロの「ノアの洪水」は、言うまでもなく、あの有名な物語を題材としたもの。ブリテンはこれを、コミカルな子供用オペラといった雰囲気の作品に仕上げている。彼の人間性を偲ばせるものとしても興味深い。

 演奏の編成は大がかりだ。指揮はもちろん加藤昌則。オーケストラはBRTアンサンブルで、これには川田知子(vn)や須田祥子(va)、辻本玲(vc)、池松宏(cb)、吉澤実(bfl)らの名手たちと、ブリテンの指示によるアマチュア奏者たちが加わっている。児童合唱はNHK東京児童合唱団。声楽ソリストは宮本益光(ノア)と波多野睦美(その妻)他。「神の声」として玉置孝匡も出演した(PAを通じての物々しい託宣。音量がちと大きい)。

 今回は演奏会形式上演のため演技もなかったが、動物たちが船に乗り込む場面で「キリエ・エレイソン」がマーチのリズムに乗って歌われるくだり(ここは音楽的にも秀逸なユーモアの個所だ)で、ステージ奥に並んだカラフルな服装の児童合唱団が代わる代わる行進のジェスチュアをしつつ歌うという趣向も凝らされていた。
 ハンドベルだけでなく、サンドペーターやマグカップまで楽器として使用されるこの「ブリテン版神秘劇」。ノアの妻の悪妻ぶりも織り込まれ、いかにも街(オールドバラ)の教会で住民たちが自ら参加して楽しんだ祝祭神秘劇に相応しい雰囲気を感じさせるだろう。

 ただし、自ら創造した人間や獣の不道徳に激怒した神が、「復讐」と称して彼らを滅ぼし、ただノアとその家族のみを許して救うというこの物語は━━何とも都合のいい話で、納得し難い筋書であり、キリスト教徒でない聴き手にとっては多少白ける要素もあることは致し方ない。

コメント

 少し前、観世能楽堂で、加藤さん作曲の楽曲と能楽とのコラボ企画を拝見しました。森谷真理さん、N響のコンマス、まろさんの演奏で、大変、自然な流れで能「安達ヶ原」と融合し、興味深い、ひと時でした。今回も、上演が稀な曲を、波多野さん、宮本さんをはじめとした名演奏家の競演で、興味深い解説で聴くことができました。コンクールの審査をはじめ、多岐にわたる加藤さんの活動に、これからも期待しております。
 また、今回は独唱、児童合唱ともマスクなしでの上演で、ようやく、こうした形になってきて(まだまだ油断もできないわけですが)、とりわけ、子供たちの元気な姿には嬉しく思いました。ただ、ここ2年の合唱界のダメージは、他の諸々の文化活動との比較でも、大きいものと言えるのかもしれません。関係者の方々には、頑張っていただきたいところです。
 しかし、一方では、一部の府県で、特定の指導者が、数十年の長きにわたり、変に独占的に力をもってしまったり、派閥を作ったり、勝手に講習会や大きな発表機会の出場団体を決めてしまった、などの噂をきくこともあります。
 知人によると、そうした指導者の団体なのでしょうか、先日、関東のある合唱団で、第九の4楽章を定演でやったが、ソリストに椅子を用意せず、30分近く、立ちっぱなしにさせてしまった、という前代未聞の演奏会があったそうです。(男声ソリストは結構有名な方々で、傍から見ても、明らかに 不満気だったようです。) こうしたことは、指導者が、自らの力や虚栄心に酔いしれて、基本的に肝心な、ソリストへのリスペクトを忘れてしまっている結果、と言わざるを得ないでしょう。
 多くの指導者の方々には、こうした思い上がった気持ちによるミスは皆無かと思いますが、謙虚な気持ちで、よりフェアで、民主的な合唱界が構築されるよう、頑張っていただきたく思いますし、上記のような指導者には、しっかりと、叱責、注意をお願いしたいところです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中