2024-02

2022・4・22(金)高関健指揮東京シティ・フィルのブルックナー

       東京オペラシティ コンサートホール  7時

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と常任指揮者・高関健が、三善晃の「交響三章」とブルックナーの「交響曲第4番《ロマンティック》」で、前月定期に続く快演を聴かせてくれた。コンサートマスターは特別客演の荒井英治。

 前半に演奏された三善晃の「交響三章」は、私個人の受容体験からすればだが、あの渡邉暁雄と日本フィルによる1960年の初演の際の印象とは全く別の作品のように思えるほどに、音楽が輝かしく雄弁で、壮麗かつ精妙なものに感じられた。
 もちろん当時の私の理解力が乏しかったことは間違いない。しかし、現在の日本のオーケストラの水準の高さが、作品本来の特質をいっそう明確に浮き彫りにしているのも事実なのではないか。この曲の良さを改めて強く感じさせる演奏であった。


 休憩後には、ブルックナーの「第4交響曲」。今回取り上げられたのは、最近話題になっている「コーストヴェット校訂版」である。
 やれハース版だ、ノーヴァク版だ、レーヴェ改訂版だ、と、ただでさえややこしい話が付きまとうブルックナーの交響曲に、またコーストヴェット版などというのが出て来た。私のように、筋金入りのブルックナー・マニアを自称する者にとっては興味津々だが、他方、プログラム解説を書く商売という立場からすると、「またかい」と辟易させられるのも事実なのだ。

 ただ、このコーストヴェット版というのは、全く新しい別の版ではなく、大雑把に言えば、これまで在った3種の版━━①「1874年版」(初稿)、②「1878/80年版」(本人による第2稿、ハース版とノーヴァク版の基で、所謂現行版)、③「1888年版」(レーヴェ他による改訂稿)とを、最近の研究に基づき再校訂したようなものだとのことだから、さほど神経質になる必要もなさそうである(注、このコーストヴェット版3種の演奏を1セットにした面白いCDが最近出た━━キング・インターナショナル KKC―6613~6)。

 今日のマエストロ高関のプレトークによれば、今日演奏する「コーストヴェット校訂による第2稿」は、ほぼハース版に近いものの由。
 ただし高関自身がオリジナルの筆写譜を含めて研究した結果を織り込んでのものになるという注釈がついて、「今日は、基本的にはハース版で演奏しようと思いますが、怪しいと思ったところは直しました。ですから途中で、アリャ?と思うところがいくつかあるはずです」と解説された。ということは、高関校訂版か。

 確かに、私も聴いていてアリャと目を丸くしたところがある。
 例えば、ハース版総譜(ブライトコップ&ヘルテル出版)第1楽章の第73~75小節と、第435~437小節におけるホルンの全音符等が消えて、完全なゲネラル・パウゼになっていたこと!

 因みに、前出のフルシャ指揮の同じ「第2稿」の演奏では、ハース版総譜と同様、ちゃんと(?)ホルンが3小節にわたり長い音を吹いている。ここでホルンが吹いていないのは、1874年の初稿版総譜(ノーヴァク校訂・国際ブルックナー協会出版)のほうなのである‥‥。となるとこれは、やはり高関校訂版━━というわけか?

 版の問題は別として、高関とシティ・フィルの演奏は、極めて格調の高い、立派なものだった。1階席後方下手寄りで聴いた印象では、響きも豊かで重厚で、ブルックナーの交響曲の演奏としても、良い意味での王道を往くものだったであろう。

 ただ、やたら出番の多いホルン群は実によく頑張っていたものの、しかしやはり、少し苦しい。この辺はプロなのだから、やはりもっとできるだけ完璧に吹いてもらわなければならない。とはいえ、第3楽章でホルンがトランペットおよびフルートと対話を交わし絡んで行く個所のように「ぴたりと決まった」部分も非常に多く、そこは実に素晴らしい調和を為していたのだから、もう一息というところである。

 それにしても、高関健は、シティ・フィルをよくここまで引っ張った。彼の指導力と、それにこのようなレパートリーを手がけて聴衆を惹きつける力量は、絶賛されるべきである。

コメント

やはりこうあって欲しい

今回も東条先生をお見かけして、感想を楽しみにしていました。先月のギルバートのブルックナーは、自分的には「カリフォルニアロール」でしたが、高関さんのブルックナーは、言ってみてば「正統派の割烹料理」の味わいで、細やかさとスケールさの両立は見事でした。こっちが日本人だからかもしれませんが、ブルックナーはかくありたい、です。クライマックスでやたらと音量を上げないのも丸印です。ホルンは、小生はもっと外すかと思っていたので、十分及第点です。基準を上げれば厳しくなりますが、まあ立派なものと感じました。ネットでも意見が割れていますね。今年はこの後、ヴァイグレと広上さんが7番をやります。ようやくコロナ明けの雰囲気です。あ、三善作品もお腹いっぱいになる前菜(八寸?)でした。

お疲れ様です。
高関健の演奏は随分聴いたし、これからも幾つか聴くことになる。冷静な分析と、緻密な構成は必要だし、効果を上げている。しかし、掴みと言う点では、今回のブルックナーは、テンポが良くない。楽員に集中力を求めていたが、あれでは集中は続かないだろう。典型として出たのはホルンだ。彼の演奏は、他の曲もそうだが、音楽的な「ノリ」がない。クラシックとはいえ、やっている時は、「ロックンロール」だ。彼の演奏には、それは皆無なため、聴きては辛い話しになる。ブルックナーは、録音もされて、あらゆる大巨匠と比較されるのも覚悟の上だろう。「日本人としては」は通用しない。シティ・フィルの水準を引き上げた功績を承知の上で申しあげる。

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