2024-03

2022・5・7(土)飯守泰次郎指揮仙台フィルハーモニー管弦楽団

       日立システムズホール仙台・コンサートホール  3時

 飯守泰次郎は仙台フィルの常任指揮者を2018年の4月から務めているが、私はこの顔合わせによる演奏会を聴いたのはこれまで1回しかない(☞2019年2月8日)。
 今回はブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストは菊池洋子)と「交響曲第4番」というプログラムで、それは彼らのブラームス・ツィクルスの最終回にあたることもあって、日帰りで聴きに行くことにした。コンサートマスターは西本幸弘。

 今日の飯守と仙台フィルの演奏は、2曲とも、非常な力感を迸らせていて、むしろ荒々しさを感じさせたほどである。
 コンチェルトの方は、ブラームスの若き日の気魄にあふれた作風のものだから、それも一理ある解釈だったろう。菊池洋子のソロもそれに呼応し、この人のいつものスタイルからはちょっと想像できないほど、豪放で、時には力づくという印象も受ける演奏だったように思われた。
 彼女はアンコールにブラームスの「子守歌」を演奏したが、こちらは優しさにあふれた世界だ(アンコールの曲名を場内アナウンスで告知したのは親切な方法である)。

 だが、ブラームス晩年の落ち着いた思索的な交響曲たる「4番」が、後半2楽章に於いて、時に凶暴なほどの勢いを示して演奏されたのには、少々面食らった。よく言えば、最後まで闘争的な精神を失わぬブラームス像を描き出した演奏、ということになるだろうか。それはそれで、一つの解釈であろう。

 実は前半2楽章が意外に単調な演奏で━━例えば第2楽章第87~88小節前後の、全合奏で激動的に進んで来た音楽が一転して幅広い弦の主題に移るくだりが、あまりに表情の変化なしに淡々と進められてしまったところなど、これまでのマエストロ飯守らしくないな、と、ちょっと心配になっていたのである。
 それゆえ、ティンパニを狂気の如く豪打させつつ嵐の如く突き進んで行く第3楽章や、何かに怒りをぶつけるようなエネルギーを変奏ごとに高めて追い込んで行く第4楽章を聴いた時には、解釈の問題は別として、とりあえず安心させられたのは事実だった。

 氏の個人生活における御不幸などが、氏の音楽への没入度を高め、その音楽にむしろ情熱を加えたのか、という気もした。ともあれ、今日の飯守&仙台フィルの、全体に少々「荒っぽい演奏」が、この二つの楽章での昂揚を通じて、音楽との肉離れを起こさずに済んだ、とも言えるかもしれない。

 終演後の、「オーケストラ主導による聴衆の分散退場」方式がまだ続いているのには心を打たれた。今日はコンマス(指揮者がやる場合もあったはず)が客席に退場の順序をユーモラスに指示し━━「間」を保たせるためにPRも折り込むサービスの良さだ━━オーケストラの楽員全部がステージ上から笑顔で手を振りつつそれらを送り、客席が半分くらいになった時点で今度は楽員も「分散退場」に移るという独特のやり方だ。

 国内でこういうアットホームなことをやるプロオケは、他にないだろう。客席の実際の状態や聴衆の心理状態も考えずただ機械的な場内アナウンスでのろのろとした「分散退場」を強制する各ホールのやり方は、私にはナンセンスだと思え、その進行の遅さに苛々して帰りを急ぎたい客が自主判断で動いてしまうのは無理もないという気がするのだが、この仙台フィルのやり方なら、お客たちも笑って従う雰囲気も生まれるというものである。

 このホールは客席数800だが、今日は満席。事務局の話によれば、金曜(夜)土曜(マチネー)の2日制定期のうち、土曜は完全に「入りを回復」したとのこと。相次ぐ地震となかなか熄まないコロナの中で頑張っているオーケストラを応援したいものである。

 9時2分の「はやぶさ」で帰京。連休の終りにもかかわらず空いていたのが意外。

コメント

マエストロ飯守

飯守さんと仙台フィルさんは、今年がファイナルシーズンだそうですね。関西フィルさんの桂冠名誉指揮者でもあるマエストロ飯守の指揮は、圧倒されます。渾身の指揮だと思います。生涯現役でいてください!

飯守さん健在

飯守さんの指揮による演奏は、最近聴いていませんでしたが、ご健在のようで安心しました。東条さんのレビューにありました「時に凶暴なほどの勢いを示した演奏」と聞くと、是非、演奏会に行ってみたいと思いました。一方、飯守さんと同い年である、小林研一郎さんの指揮による演奏を聴いたのですが、以前と同様のステージマナーの良さは感じましたが、以前程の演奏の燃焼度がなかったのが残念だと思っていたところでした。

荒々しさ自体は元気なアマオケみたいでよいと感じたのですが、ヴァイオリンの音程が悪かったり、ホルン&トランペットの音外し、フレーズ最後まできちんと丁寧に吹けないことなどが頻繁にあったのは残念でした。あと、このピアニストにこのコンチェルトは酷だったのではないでしょうか。

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