2024-03

2022・5・22(日)新国立劇場「オルフェオとエウリディーチェ」

       新国立劇場オペラパレス  2時

 オペラ部門芸術監督・大野和士のもとでレパートリーの拡大を図っている新国立劇場が、初めて主劇場で手をそめたグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」。開場以来25年を経て、嘆かわしいレパートリーの欠如がやっと埋められたことになる。
 昨シーズンに予定されていたヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・シーザー)」が、コロナ禍のため流れていたので、新国立劇場オペラパレスとしては、これが初めての「18世紀中盤以前のオペラ」ということになるようである。

 そのグルックのオペラ━━永遠の愛の物語「オルフェオとエウリディーチェ」を手がけるにあたり、演出と美術に勅使川原三郎(振付・衣装・照明も)を起用したことは、大いに意義ある試みであったと言えよう。手垢にまみれた、ありふれた写実的な手法などに依らず、かつ西洋の物真似でもなく、これぞ日本の文化からの発言という形でこのオペラの舞台が制作されたことには、全面的に賛意を表したい。

 真っ暗な背景の中に浮かび上がる巨大な百合の花と、前面に配置された白い皿のような円形の主舞台との対比の美しさは印象的で、それはまるで抗しがたい闇と暗黒の宿命と、その中に真摯に生きる純粋な人間たちとの対比を象徴するかのよう。
 合唱も黒づくめの衣装で、舞台には現れるけれど、所謂演技的な行動は採らない。つまり、ギリシャ劇の「コロス」としての役割なのである。そして勅使川原演出らしく、ダンスが要所に挿入されるが、これはもちろんドラマの内容の心理的表現の役割を与えられている。

 今回は、シンプルなウィーン版を基本に、天国の場面などにパリ版を取り入れた演奏だったと思われるが、25分程度の休憩1回を含め、計2時間という短い上演時間。版の選択も妥当だったというべきであろう。
 オルフェオ役にはカウンターテナーのローレンス・ザッゾ、エウリディーチェ役にはヴァルダ・ウィルソンが出演し、特に前者はかなり濃厚な歌を聴かせた。

 アモーレ役は三宅理恵が歌い演じたが、前2者に比べてみても、歌い方にもっとメリハリが欲しい。イタリア語歌唱として、何とも平板すぎるのだ。これは、敢えて言えば、コロナ禍のため2年以上も鎖国状態が続いていた日本のオペラ界の問題ではないかと思われる。
 新国立劇場合唱団(合唱指揮・冨平恭平)は充分責任を果たしていた。

 今回の指揮には、気鋭の若手、鈴木優人が起用され、東京フィルハーモニー交響楽団とともにノン・ヴィブラート奏法による演奏で、新国立劇場のオペラ上演に新風を吹き込んだ。
 爽やかで美しい個所ももちろんあったが、━━何故かオーケストラの音が異様に薄く痩せて、鳴っていない個所も多かったのには興醒めした。例えば序曲。それから第3幕の序奏に使われた舞曲など。
 序曲が始まった時など、今日は室内アンサンブル編成なのかと思ったほどだ。定期演奏会ではあれほど素晴らしい演奏をしているオーケストラなのに、別動隊となると、こうも違うものか。これは今に始まったことではないが。

 なおダンスは、佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳。

コメント

序曲の最初の音で音楽自体にはハリがあるものの弦の音の貧弱さにはびっくり。全く同じように思いました。BCJなら同じくらいの弦の編成で池袋の芸劇大ホールを十分鳴らせるくらいなので次回以降バロックオペラではぜひBCJの起用をお願いしたいものです。

マエストロ・チョンの来日中は、どうしても主要メンバーが定期演奏会のほうに行ってしまいがちですね。といって「新国組」の実力が落ちるとも思わないので、今回の演奏は慣れない奏法によるところもあるのではないのでしょうか。
一方でなぜ今回、バッハコレギウムジャパンが起用されなかったのか?という疑問も頭をよぎりました。

「オルフェオとエウリディーチェ」は新国立劇場主催の1999/2000シーズン小劇場オペラとして、2000年6月25,27,28,29日に公演されています。

19日と22日を観ました。歌唱だけでなく、歌手の動き、ダンス、衣装、美術、合唱、どれをとっても無駄がない本当に美しい舞台は、耳だけでなく目でも楽しめるオペラだったと思います。「松風」を思い出しました。
少し残念だったのは、アモーレの動きや歌にはほかの出演者のようなしなやかさというか、流れるような美しさが感じられなかったこと。オルフェオ、エウリディーチェ、プロのダンサーたちと比べては申し訳ないですが、先月のばらの騎士のゾフィーでも同じ違和感があったので、一部の日本人歌手の課題なのかなとも思えます。
新国オペラ鑑賞が中心の私には海外の上演と比較はできませんが、痩せた音とは聞こえず。東京フィルから通常の公演や演奏会とは異なる音色が聞こえてきて、良い意味での新鮮さを感じました。2階正面S席で聴いた音響の良さにも驚きました。本当はあと2回くらい観たかったので、3回公演というのはあまりにも少なすぎるかなと。再演があるとよいのですが。

参考まで

小劇場オペラでの公演は鑑賞記憶がありますが、対外的なものにはならないと思います。バッハコレギウムジャパンを入れることはできないはずです。契約オケの関係があるとのことです。以前、劇場のそれなりの責任者から直接お聞きしたことがあります。実は座付きオケを作れないのかと質問をしたのですが、諸事情等があるとのことでした。(諸事情が無くなることを期待しましょう)今回の演奏は30人ほどの小編成に見えましたが・・・。舞台は皆様のご感想とほぼ同じく、よくできていて素敵な公演だったと思います。今後のバロック・オペラ楽しみです。

契約の問題でピットに入るオケが限定されるなどということはわかったうえでBCJが入ってほしいと皆さま言っているのだと思いますし、私もそのつもりで言いました。以前N響や読響が入って、全く見(聴き)違えるような音がピットから出てきたものです。そんな契約など変えてしまえばよいとお客が思うのはごく自然なことで、発言しなければ改善もされません。

1日目の公演を拝見しました。

18世紀中盤以前の作品、やっとか‥という印象でしたが、主の歌手、おニ人の歌唱や演技の出来栄えは大変すばらしかったのですが、個人的に、美術、演出、ダンス、全体の構成にはあまり、これといったものは感じませんでした。
 オケも、それなりにベテランメンバーもいましたが、初日ということもあってか、出だしの所があまり揃わないなど、個人的に、あまり満足できませんでした。
 舞踊もよく感じる、「キレ」に該当する部分を(これはジャンルにより、結構違いますが)、個人的に、感じることはできませんでした。この点、新国立のバレエ団が、滅多に同劇場のオペラに出ないのはなぜなのかということも、今までこの劇場が18世紀中盤以前の作品を滅多に上演しなかったことと並行して、個人的に大変疑問な所です。
 新しい時代を開くための必要な経験値の蓄積、決断、改革‥いろいろなことが求められているように考えました。 

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