2024-02

2022・5・27(金)カーチュン・ウォン指揮日本フィル

      サントリーホール  7時

 日本フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者であり、来年9月には首席指揮者就任予定のカーチュン・ウォン。
 この日は5月東京定期の初日で、伊福部昭の「ピアノと管弦楽のための《リトミカ・オスティナータ》」(ソリストは務川慧吾)と、マーラーの「交響曲第4番」(ソプラノは三宅理恵)がプログラムに組まれた。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 世界の檜舞台に最近登場した若手の東洋人指揮者のうち、トップグループにいる1人は、やはりこのカーチュン・ウォンではなかろうか。いい指揮者だ。彼をシェフに招くことのできた日本フィルは果報者と言うべきであろう。

 ただ、彼のマーラーの交響曲へのアプローチのコンセプトは、今日の「4番」を聴いて、また解らなくなった。
 今回の「4番」の演奏は、伸縮自在、変動自在のテンポと、極めて微細な表情の変化に富んだ演奏だった。それはもちろん、ウォンの勝手な解釈ではなく、あくまでもマーラーが総譜に細かく書き込んだ指示を根拠としているものであることは理解できる。

 が、それはまた━━先日の日本フィル定期でのマーラーの「第5交響曲」(☞2021年12月10日)における不動の整然たる構築、あるいは読響を指揮した「アダージョ」(☞2021年4月6日)における鋭角的な反ロマン的な演奏などとは、正反対の性格を示す。むしろ、都響を指揮した時の、あの大きな起伏とうねりに満ちた「新世界交響曲」(☞2021年7月26日)と共通するスタイルの演奏であろう。

 作品の性格に応じてアプローチを変えるということがあるにしても、この違いはあまりに大きすぎるのではないか。やはり、彼のマーラーを云々するには、もっといろいろ聴きこまなくてはならないようである。それゆえにこそ、カーチュン・ウォンはいっそう興味深い指揮者のように思えるのだが‥‥。
 なお、こういう変幻自在の演奏は、日本フィルにとっては、少々勝手が違うように感じられたのだが如何。

 1曲目の「リトミカ・オスティナート」も、日本人指揮者による演奏とは全く異なっているところが面白い。この曲を、これほど熱っぽく、濃厚に描き出した指揮者がいただろうか? 
 この「外国人指揮者」が手がける伊福部のリズム性は、より強靭で、より熱狂的だ。それだけに、曲の終り近くでは、そのあまりの執拗さに辟易させられるという結果になってしまったのだが━━。とはいえ、伊福部昭の思いがけぬ面を見せられた気がして、これまた非常に面白い演奏だったのは確かである。

コメント

去年12月の5番に続くカーチュンウォンのマーラー第二弾の4番でしたが、初日に関していえば響きの多彩さとオケの合奏力が際立った5番には及ばなかったと思います。ホルンは首席の信末さん以外はサウンドの純度に欠け、エースのトランペット奏者やフルートもあやしいところがあったりで、カーチュンさんの目指す意欲的な表現や純度の高い響きが十分具現化されていないもどかしさを感じました。日フィルにありがちな厳しさの足りない演奏で、ネットで激賞されているのがいささか不思議です。ただ、翌日の演奏を配信で聴いてみましたが、こちらはだいぶオケの技量は安定していて改善されていた印象を持ちました。ピアノに若き名手務川慧吾さんを迎えた前半の伊福部作品のほうが明快なリズムと響きの色彩感が素晴らしかっただけに惜しまれます(前プロの負担が重すぎて後半の交響曲のほうにしわ寄せが来ただけかも)。ラザレフさんの時は魔法にかかったように変身するのですが、戦争のあおりで頼りの鬼将軍不在が長期化すれば日フィルの痛手が大きいのでは。この週、幸いサントリーホールで佐渡・新日本フィル、上岡・読響、ルイジN響、カーチュン・日フィルと聴きましたが、蜜月ぶりが見えるものもあれば、今後が気になるものもあり。やや脱線しますが、最近のN響は個性的な大物を入れて集客力はアップすると思いますが、前任者に比べ、オケの技量を引き上げる力は弱いのでは、と少し気になるところです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・衛星デジタル音楽放送
ミュージックバード(エフエム東京系) 121ch THE CLASSIC
「エターナル・クラシック」
(毎週日曜日 12:00~16:00放送)出演

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中