2024-03

2022・5・31(火)シャルル・デュトワ指揮大阪フィル

      フェスティバルホール(大阪) 7時

 あの凄絶な「サロメ」(☞2019年6月8日参照)から3年、大阪フィルハーモニー交響楽団に客演したシャルル・デュトワ。今回の定期では、ハイドンの交響曲第104番「ロンドン」、ラヴェルの「クープランの墓」、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」(1911年版)━━というプログラムを指揮した。なお、ピアノのソロには北村朋幹が加わっていた。コンサートマスターは須山暢大。
 2日目の公演だった所為もあろうが、驚異的な快演である。

 いつものように、バルコニー席で聴く。壁から空中に突き出した席である。ここは各パートが明確に聞こえるので、オーケストレーションの妙味が楽しめ、しかも弦の音色が柔らかく量感豊かに聞こえるという良さがある。但し、高所が苦手という人には断じて推奨できない。私も今ではかなり慣れたが、それでも時々、下方を見て身体が冷たくなる時がある。

 さて、ここで聴いたハイドンの「ロンドン交響曲」は、極めて美しかった。厚みのある弦と、品のいい管の音色が程よくブレンドされ、ハイドン最後期の交響曲が持つ風格とスケール感とが、実に快く再現されていた(1階席のどこかで聴いていたという知人は弦の音が硬くて失望したと言っていたが、私の聴いていた高所のバルコニー席では全く逆の印象である。難しいものである)。

 驚異的な演奏だったのは、ラヴェルの「クープランの墓」だ。
 昔は重厚で剛直で武骨な音というイメージを売り物にしていたあの「野武士的」な大阪フィルが、こんなにも軽やかで優雅で、しかも洒落た音を出すオーケストラになったことには、感慨を抑えきれなくなる。こういう音を引き出したデュトワも、まさに非凡で、名匠の為せるわざと言うべきだろうが、それに易々と応えられる大阪フィルも、頼もしい限りだ。

 尾高忠明が音楽監督に就任して以来、このオケは大きく色合いを変え、機能的な力量も充分になっていると思うが、そうした基盤が出来たからこそ、このように卓越した演奏も可能になったのであろう。曲の冒頭から、あのラヴェルの音楽に特有の、言葉に尽くし難い陶酔的な雰囲気が感じられ、私は本当に気持よく聴いた。オーボエをはじめ、木管群がいい演奏を聴かせてくれていたし。

 「ペトルーシュカ」でも、デュトワの色彩感に富んだ壮大な威力のある表現が素晴らしい。この初版の「4管編成版」の豪壮さは何度聴いても魅力的で、ストラヴィンスキーが如何に斬新な管弦楽法をこの作品から持つようになったか━━特にこの席で聴いていると、各楽器の複雑な絡みが鮮やかに浮かび上がって、その巧みさに舌を巻かずにはいられないほどだ。

 「ペトルーシュカ」での今日の演奏は、前半では多少「型通り」の感もなくはなかったものの、中盤からは、文字通り音楽が大波の如く揺れ動いて行った。前面で騒めく木管と弦とは別に後方でトランペット群がクレッシェンドとディミュヌエンドを繰り返す個所など、たいていの指揮者は金管のそれを強調するものだが、今日のデュトワはそれらを同等の力で響かせ、しかも見事に成功させていたのである。

 デュトワの巧みさ、そして大阪フィルの予想以上の柔軟さ。躍動感と色彩感。大阪まで聴きに行った甲斐があった。

コメント

1日目を拝聴しました!

東条先生は、2日目にいらっしゃったのですね。お会い出来なくて残念。マエストロデュトワの巧みさと、大阪フィルさんの力量が、圧巻の演奏を作り出したと思います。「クープランの墓」も「ペトルーシュカ」も、音の積み重ねが素晴らしい!大阪フィルさん、1公演ごとに力をつけていらっしゃいますね。マエストロ尾高のご尽力だと思います。拝聴できて、良かったです!これからの大阪フィルさんのご活躍が楽しみです!東条先生の「大阪まで聴きに行った甲斐があった」、この一言、演奏者冥利に尽きますね!

大植/大フィル

大フィル最近殆んど行ってないのですが、大植さんの時代にかなり機能的なオケになったと思いますので一言。特に長原コンマス(今読響)の音が弦楽器群から飛びぬけて舞い上がっていくようでした、彼がいなくなり元の大フィルに戻っているのが残念。

長原幸太さんの事

こんにちは。弦楽器群から飛び抜けてコンマスの音が舞い上がっていくというのが、オケにとっていいのか悪いのかは分かりませんが、彼がデビュー当時、在京某オケでゲストコンマスで彼のソロもある某曲をやり、その少し後で、とあるCD店にいらした彼に話しかけた事があります。「あなた少し音、高いよね」「ええ、自分は高いんで」。さて、これがその後の彼とその周囲の、あらゆる局面の全てを説明出来るかどうかは分かりませんが、一応御参考までに(笑)。少なくとも、今の大阪フィルが後退した状態にあるという認識には、私は立ちません。

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