2024-03

2022・6・22(水)阪哲朗指揮山形交響楽団 東京公演

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 恒例の「さくらんぼコンサート」。
 ロビーには山形の名産品の即売コーナーが━━昔ほどの規模ではないけれど━━またずらりと並んで、コンサートを聴きに来た客たちを愉しませるようになった。抽選で客にサクランボを贈呈するという名物行事も相変わらずである(ただしサクランボはもう佐藤錦ではないようだが)。

 演奏会のプログラムは、木島由美子の「風薫~山寺にて」(山響創立50周年記念委嘱作品)、ラロの「スペイン交響曲」(ソリストは神尾真由子)、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」。これまでの「さくらんぼコンサート」とは少々趣を変えて、意欲的な選曲で真っ向勝負に出た、という印象だ。コンサートマスターは高橋和貴。

 阪哲朗が常任指揮者として山響の東京公演を振るのは、2019年に次いで3年ぶりになる。もうすっかりこのオーケストラを手中に収めたようである。
 山響の変貌ぶりも目覚ましい。昔は地味な、いかにも「東北の」といった雰囲気を感じさせたオーケストラだったが、飯森範親がシェフになってからは、響きと音色と表情に活気と明るさが生まれ、解放感とエネルギーが噴出するオケになった。
 そして、2019年4月に阪哲朗を常任指揮者として迎えてからは、明晰で透徹した、洗練度の高い響きが加わって来た。30年前の山響を記憶している人が、もし今日の演奏会をブラインドで聴いたなら、これが同じオーケストラだと当てられる人は、ほとんどいないのではなかろうか。

 もっとも、その所為かどうかはともかく、「風薫~山寺にて」の演奏では、多分作品に満ちあふれているであろう「土の香り」が、かなり薄められてしまっていたのは皮肉というべきかもしれない。
 でもこれは、欠点として言っているのではない。演奏自体はすこぶる立派だった。バルトークの「管弦楽のための協奏曲」での演奏と同じく、民族色よりも近代音楽的手法の作品としてのイメージを強く感じさせた、という意味で言っているのである。

 因みに「山寺」とは、仙山線の山寺駅近くにある有名な「宝珠山 立石寺」(岩にしみ入る蝉の声、でおなじみの寺)である由。この寺への懐かしさを籠めた曲を、民謡を利用したご当地ソングのようなありきたりのものにしなかったのは、賢明なことであった。
 なお、前出のバルトークの「オケコン」も、弦10型による編成ながら、量感も質感もたっぷりとして聴き応え充分のものがあったのはもちろんである。

 「スペイン交響曲」でも、神尾真由子の気魄に富んだ白熱的なソロとともに、阪と山響は躍動感と流麗さを兼ね備えた演奏を繰り広げていた。私はこの曲を面白いと思ったことはこれまでほとんどないのだが、今回はすこぶる楽しく聴けた。神尾のアンコールは定番の「魔王」。

 阪哲朗氏は、一発勝負屋として仕事をする人ではない。オーケストラの指揮でもオペラの指揮でも、じっくりと腰を据えて取り組んで素晴らしい成果を上げるタイプの指揮者である。その彼が、オーケストラの分野では山響という良きパートナーを得た。一方オペラの分野では、来年春からのびわ湖ホール芸術監督というポストが待っている。彼の真価が日本でも発揮される時代がいよいよ来たようだ。

コメント

大阪で拝聴しました!

6月23日、大阪のザ.シンフォニーホールでの同プログラムを拝聴しました。素晴らしい演奏でした。とりわけ、「スペイン交響曲」は、神尾さんとの呼応が、素晴らしく、とても面白かったです。山響さん、ダイナミックなオケになりつつありますね!響きが明るくなっているように感じます。マエストロ阪とも相性良さそう。これからが楽しみです!

阪さんが音楽監督を務めていたドイツの劇場はいずれも小ぶりで、Wikiによるとアイゼナハは500席、レーゲンスブルクは519席です。1800席のびわ湖ホールではよりスケールの大きな音楽づくりが求められますから、彼のキャリアにとっては正念場となるでしょう。楽しみです。

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