2024-02

2022・7・5(火)METライブビューイング
ドニゼッティ:「ランメルモールのルチア」

      東劇  6時20分

 去る5月21日にメトロポリタン・オペラで上演されたステージのライヴ映像。
 今回のサイモン・ストーンによる演出は、物語を現代のアメリカ中部の、ある衰退気味の街に置き換えているのが最大の特徴だ。

 自動車工場や映画館、スーパーなどが雑然と並び、回り舞台により光景は頻繁に変わって、登場人物は路上からベッドルームまでさまざまな場面を移動するという設定になる。更に舞台上方にはスクリーンがあり、そこには登場人物の拡大された部分━━人物の微細な表情、スマホ(!)の文面、同時に進行している別の出来事、思い出の光景など━━が投映されて、ドラマを多様な方向から描く、という趣向である。

 もちろん演技も服装も現代のスタイルであり、悪役エンリーコにいたってはタトゥー満載でタバコと酒壜を手から離さない、といった具合だし、ルチアも「可憐な少女」とは程遠いキャラクターで表現されているから、他も推して知るべし。
 その代わり演技は溌溂として、動きも激しい。様式的で取り澄ました人物像でなく、われわれと同様に蠢いている人間像が描かれる。

 こういうタイプの演出は、METでも最近次第に増えて来た。私はこのテの演出は好きな方だから、結構楽しませてもらった。といっても、もちろんそれなりに「筋が通っている演出」に限るけれども。

 指揮はリッカルド・フリッツァ。主役歌手陣は、エンリーコをアルトゥール・ルチンスキー、その妹ルチアをネイディーン・シエラ、彼女の恋人エドゥガルドをハビエル・カマレナ、ライモンドをクリスチャン・ヴァン・ホーンという顔ぶれだが、みんな、なかなかの実力の持ち主だ。
 シエラは血まみれの姿で「狂乱の場」を熱唱した(ここではグラス・ハーモニカが使われていたようである)。いかにも好人物そうな容貌のカマレナも、よく通るテナーで強い存在感を発揮する。ルチンスキーは第1幕でのカバレッタの最後を呆気にとられるほど長く引き伸ばして決め、観客を熱狂させていた。

 第2幕大詰めの大合唱の細部や、第3幕冒頭の嵐の場面など、いずれも省略なしに演奏されたのは有難かった。METはどのオペラでも基本的にノーカット主義を採っており、これは敬意に値する。
 9時50分頃終映。

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