2024-03

2022・7・12(火)出口大地指揮東京フィルハーモニー交響楽団

      サントリーホール  7時

 アルメニアのエレバンで昨年(2021年)に行われた第17回ハチャトゥリアン国際指揮者コンクールにおいて優勝を飾った出口大地の指揮を、今回の定期で初めて聴いた。
 プログラムはそのハチャトゥリアン作品ばかりで、「ガイーヌ」から「剣の舞」「レスギンカ」など5曲、「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」(ソリストは木嶋真優)、「交響曲第2番ホ短調《鐘》」。コンサートマスターは三浦章宏。

 指揮棒を左手に持ったこの若い指揮者は、元気一杯、オーケストラを力の限り鳴らして自らの情熱を音楽に叩きつける。それはある面で痛快かもしれないが、如何にハチャトゥリアンの音楽とはいえ、大音響で怒号すればいいというものでもなかろう。

 むしろこの日の演奏では、それ以外の個所に私は魅力を感じた。例えば「ヴァイオリン協奏曲」における、第1楽章第2主題や第2楽章など、あるいは第3楽章にエピソード風に挟まれる主題などでの、この作曲家特有の郷愁にあふれたハーモニーの扱い方。そして交響曲では、第2楽章における各楽器のやり取りに聴かれた軽快な処理、第4楽章でのクライマックスへの巧みな盛り上げ、その終結部に聴かれた全管弦楽の均衡豊かな響きなど。つまり騒々しくない部分での微細な音楽のつくり方に、この指揮者の良さが多く出ているという印象なのである。

 協奏曲での木嶋真優のソロも、ひときわ見事だった。その純な洗練された演奏は、ハチャトゥリアンの野性味には距離があるかもしれないが、この曲の強靭なエネルギーを再現して、コンチェルトとしての演奏には充分なものがあった。
 彼女のソロ・アンコールはアルメニアの作曲家コミタスの「《クランク》~イヴデスマン・ファンタジー」(木嶋真優編)という曲なる由。初めて聴いたが、後半の民族的な色彩感が面白い。

 全ハチャトゥリアン・プロの演奏会というのは、日本では珍しかろう。先頃彼のコンチェルトを3曲集めた演奏会も横浜で行われたことがあったが、私は聴いていない。正直言って私はこの作曲家の音楽にはあまり共感が持てないままでいるので、終演が9時半を過ぎるほど長く、大音響の洪水の如き趣のあった今日のコンサートには、些かへとへとになった。

コメント

ハチャトリアン

関西フィルで2番をやったときはウオルトンのヴァイオリン協奏曲(神尾)、ヴァイオリン協奏曲(庄司)の時はショスタコ6番(2006.サンクトペテルブルグフィル)ハチャトリアンだけで全てやられるとパターンが同じで食傷するでしょう。同様に伊福部氏の曲だけのプログラムを聞きに行った時もかなりうんざりしました、うまく他の作曲家とのプログラミングすれば効果的になるのですが。

脂っこい中華のフルコースみたいな…

どれをとっても極彩色の民族色の強い曲ばかりで、次々テーブルに載る脂っこい中華のフルコースみたいです。予習するまでもなく2130終演だろうと思っていました。ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲はオイストラフやシェリングの録音で親しんできましたし、2018年ごろに山田和樹氏・読響の公演でロックミュージシャン風のネマニャ・ラドロヴィッチが弾いたのを聴きました。今回ひいた木嶋真優さんはいつも没入感・憑依感がたまりません。さながら音楽の巫女です。テレビでボケた発言で芸人のような発言をしているエンターティナーですが、仮の姿で、本当は違いますね。ロン毛に革パンだけのネマニャなんてこけおどしと思いました。交響楽第2番は55分ぐらいかかる曲で、作曲家本人がウィーンフィルと録音したものを聴きながら赤坂に来ましたが、出口さんのほうがはるかにコッテリしていて面白かったです。テンポが遅かったのかわかりませんが、ちょっと長く感じて疲れて出口に早くたどりつきたかったですが。

「ハチャトリアンコンクール優勝者だからハチャトリアンプロをやらせよう」という発想が、少し安易だったのでは。若い指揮者のデビューには、しっかりしたお膳立てと気遣いが必要だと思いました。

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