2024-02

2022・7・15(金)METライブビューイング
ブレット・ディーン:「ハムレット」

    東劇  6時

 今シーズンのMETライブビューイングは10本のうち3本がMET初演の現代オペラだったが、今年のシリーズの最後を飾る作品も、オーストラリアの現代作曲家ブレット・ディーンの「ハムレット」という、2013~16年に作曲されたオペラだった。これはグラインドボーン音楽祭の制作によるもので、2017年に同音楽祭で初演された作品である。

 今回の映像は今年6月4日のMET上演ライヴ。指揮がニコラス・カーター、演出がニール・アームフィールド。主役歌手陣はアラン・クレイトン(ハムレット)、ブレンダ・レイ(オフィーリア)、ロッド・ギルフリー(王クローディアス)、サラ・コノリー(王妃ガートルード)、ジョン・レリエ(先王の亡霊)他。

 全2幕構成で、あのシェイクスピアの長い戯曲を要領よくまとめ、重要な場面をそのまま生かしたマシュー・ジョセリンの台本もよく出来ているだろう。あの「To be,or not to be」とか「尼寺へ行け」などの名セリフも、状況は変えられてはいるものの、ちゃんと生かされている。

 一方、音楽は、かなりハイ・テンションだ。いくつかの場面を除き、音楽は常に煽り立てるように進む。声楽の上でも高音での叫びが随所に聞かれ、恰も各登場人物全員が何かに苛立っているように感じられる。第2幕冒頭に置かれたオフィーリアの「狂乱の場」は、他のオペラのいかなるそれにも増して激烈だ。アラン・クレイトン歌い演じるハムレットも、普通予想される思索的な音楽ではなく、かなり荒々しい曲想で描かれる。

 管弦楽法は極めて多彩で、鋭い響きが多い。今日の上映では、映画館の左右や後方からいろいろな音が聞こえるので、最初はだれかお客が騒いでいるのかと思ったが、実は上演に際し、客席にも打楽器や金管楽器が配置されていたことが、上映の中のインタヴューで判明した。これはハムレットの精神が苛立っている時などに現れる。オケ・ピットの中にも合唱が配置されている由で、不思議な効果を上げていた。

 剣試合と、それに続く修羅場は、音楽も演出も、すこぶるスリリングで物凄かった。アラン・クレイトンは巨漢で、どう見ても「思索的な青年ハムレット」の雰囲気ではないが、何しろほとんど出ずっぱりだし、しかも最後にはこのようにフェンシングの試合で歌いながら大暴れするわけだし、あの体格でないととても勤まるまい。そしてこのオペラ、最後は妙に感傷的にならずにスパッと終るのが良かった。
 9時20分終映。

※このMETライブビューイング、来シーズンは名作もかなり復活するようで、「メデア」「椿姫」「フェドーラ」「ローエングリン」「ファルスタッフ」「ばらの騎士」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」などが予定されているが、中に新作として、ケヴィン・プッツの「めぐりあう時間たち」と、テレンス・ブランチャードの「チャンピオン」というのが入っている。この「チャンピオン」の予告編ではボクシングのリングの画像が見られたが、ボクシングをやりながら歌うのかしら? 歌手も大変な時代になったものだ。

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