2024-03

2022・7・17(日)佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2022
プッチーニ:「ラ・ボエーム」

     兵庫県立芸術文化センター  2時

 東京でドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」とワーグナーの「パルジファル」が同時期に上演されている一方、関西ではその全く同じ時期に西宮でプッチーニの「ラ・ボエーム」が、びわ湖ホールではヴェルディの「ファルスタッフ」が上演されている。日本の音楽界も華やかな状態になったものだ。

 こちら「ラ・ボエーム」は、2020年にホール開館15周年を記念して上演されるはずだったのが、新型コロナ蔓延のため延期されていたものである。「奇蹟的にその時と同じキャストが再び集まり」(佐渡のメッセージ)とのことだが、そのダブルキャストもすこぶる華やかだ。

 今日の主役陣は外来勢で、フランチェスカ・マンゾ(ミミ)、エヴァ・トラーチェ(ムゼッタ)、リッカルド・デッラ・シュッカ(ロドルフォ)、グスターヴォ・カスティーリョ(マルチェッロ)、パオロ・イングラショッタ(ショナール)、エウジェニオ・ディ・リエート(コッリーネ)、ロッコ・カヴァッルッツィ(ベノアおよびアルチンドロ)。ただし脇役には日本勢も出演している。それにひょうごプロデュースオペラ合唱団&児童合唱団、ひょうご「ラ・ボエーム」合唱団、兵庫芸術文化センター管弦楽団に、指揮が佐渡裕という布陣。
 (因みにもう一組のキャストには、砂川涼子、笛田博昭、高田智宏、町英和、水口健次、片桐直樹ほか、これも錚々たる顔ぶれが揃っている)

 オーケストラが豊かな音で響いているし、マンゾの愛らしいミミをはじめ、如何にもパリの貧しいが温かい心を持った仲間たちという雰囲気を満載した歌手陣の歌と演技も素晴らしい。

 だがそれ以上に今回感銘を受けたのは、ダンテ・フェレッティによる演出・装置・衣装である。彼はフェリーニやパゾリーニやスコセッシらの巨匠映画監督の下で美術を担当して来た大ベテランだが、今回よくこのような人を起用できたものだと思う。演出補にはマリーナ・ビアンキ、装置にはフランチェスカ・ロ・スキアーヴォの名がクレジットされているので、各分野でどのような分担が為されていたのかは定かでないが、とにかく舞台装置が洒落ている。

 原作の「パリの屋根裏部屋」は、セーヌ川沿いの廃船に変えられていて、その河畔の光景がこれまた、なかなか雰囲気に富むと来ている。
 愉しかったのは第2幕のカフェ・モミュスの場面だ。最初は店の正面の街路における賑やかな光景だが、やがて書き割りがひとつ引き上げられると、そこは店の中の光景になり、奥の窓に描かれている店の名前が裏返しに見えるという凝りよう。幕切れの軍楽隊は、店の向こう側を行進しているらしいので、これはさすがに費用節減だろうと思っていたら、やがてそれが袖を廻って今度は舞台前面に現れ、派手に行進するという具合だ。

 あの伝説的なフランコ・ゼッフィレッリ演出の舞台ほどではないとはいえ、当節、子供たちを交えた大群衆がこれだけひしめき合う舞台は、なかなか観られないだろう。ましてコロナ蔓延の時代にあっては尚更のこと、「万全の対策を以って臨んでいますから」というホール側の自信も窺えるというものである。

 このところ重いオペラばかりに接していたので、久しぶりに聴いたプッチーニの音楽が、まあ何と開放的なものに聞こえたことか。日頃あまり好きではなかったこのオペラが、今日は実に楽しく、幸福な気分で聴けた。だがそれは、演奏の良さと、洒落た舞台の所為でもある。

 西宮でこんな素晴らしいプロダクションを上演しているのだということが、もっと東京、いや日本中の音楽関係者とファンたちにも知られてもいい。それには抜粋でもいいからネット配信を活用してデモンストレーションをしたらどうかと思われるのだが━━もっともロビーでの雑談でそういう提案をしたところが、ホール側ではさほど興味がないような雰囲気ではあった・・・・8回公演が全て満席に近い大入りという現状であれば、まあそれは二の次、三の次という考えにはなるだろうけれども。

 終演後、阪急電車とJRを乗り継ぎ、大津へ移動。

コメント

羨望

東条先生、相変わらずエネルギッシュですね!羨ましい限りです。

西宮〜大津

今日(18日)大津でお見かけしました。西宮からの移動でしたか。私は西宮で国内組の初日を観たので、来日組はこれからになります。
両端の幕は屋根裏部屋ではなくて、セーヌ川に浮かぶ船という設定になっていて、これじゃ「外套」じゃないかと、思わずツッコミを入れたくなりました。川船からもたくさんの煙突が見えるかも知れないですが、ロドルフォの第一声からして違和感がありました。それに、わざわざ船にミミが火を貰いに来るなんて考えられないし。とは言え、真ん中の幕は美しいものだったと思います。カフェ・モミュスの、うちそとの切替なんてこれは見事なもの。何十年も使われているゼッフィレッリのMETのスペキュタクラーなプロダクションを観たあとでは、どんな演出にしても太刀打ちできないのは事実ですが、もはや、あれだけお金をかけられる時代でもないですしね。
「奇蹟的にその時と同じキャストが再び集まり」というのは、二年の歳月を経て、その間に海外組でスターダムに駆け上がった人はいないということでもあるのでしょう。こういうところにもコロナ禍の影響、彼の地での出演機会にも恵まれなかったという事情もあるのでしょうね。世間では第7波とか騒がしいですが、オペラ上演の熱気が戻って来たのは嬉しいですね。今日の大津は西宮を凌ぐ出来映えでした。

ミミは

一幕冒頭で四人が歌っているときに、ミミが窓から様子を伺っていました。ロドルフォを残して友達が出ていたところで、今だわっと火を貰いにきたように見えました。もともと好きじゃないとそんなことしないよね、と休憩時に話しました。

ミミは

一幕冒頭で四人が歌っているときに、ミミが窓から様子を伺っていました。ロドルフォを残して友達が出ていたところで、今だわっと火を貰いにきたように見えました。

 RAの席では見えなかったものがLAの席では見えました。確かに、第1幕では舞台上手の建物の二階から、ミミが覗き込んでいましたね。半分しか見えない席だと、位置を変えて再度観るのがいいかも。やはり気になる船の舞台設定、台本ではコルリーネは階段落ちするのだけど、この演出だったらセーヌ川に落っこちるのかなあなんて。

 ということで、来日組の20日にも行きました。キャストはみんな若いから、このオペラには合っていましたね。これもRAでは見えなかったのですが、第3幕ではA.M.カッサンドルのDUBONNET(アペリティフのひとつ)のポスターが壁にベタベタ貼られていましたね。ちょっと時代は違うようにも思いますが、これも演出家の洒落なのかも。

GIACOMO様
あのポスターは何なんだろう?と疑問だったのが解決しました(恥ずかしながら工事現場のマークか何かと思っていました、スッキリしました)。
正にその1930年頃に時代をスライドさせた演出だと、プロデューサーがおっしゃっていました。衣装などもそんな感じでしょうか、知識が無いのでわかりませんが。

なるほど

mmさま
そういうことでしたか。1930年代に設定ということなら、あのポスターの時代とマッチしますね。大戦間のアール・デコの時代ということになり、ムゼッタの衣装などは典型的なものかも知れませんね。
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(東条さん、場をお借りしてしまい失礼しました)

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