2024-03

2022・10・28(金)藤岡幸夫指揮関西フィルハーモニー管弦楽団

     シンフォニーホール  7時

 常任指揮者・藤岡幸夫が指揮する関西フィル10月定期は、木島由美子の「Pleuvoir~あめふり」、伊福部昭の「ヴァイオリン協奏曲第2番」(ソリストは神尾真由子)、貴志康一の交響曲「仏陀」という、すこぶる意欲的なプログラム。コンサートマスターは赤松由夏。

 木島由美子の作品は、昨年の山形交響楽団の東京公演で「風薫~山寺にて」という新作を聴いたことがあるが、今日の「Pleuvoir~あめふり」は遥か前、2003年の作品の由。特に雨の描写があるわけではなく、題名を聞かぬ限り雨との関連も感じられないので、一種の個人的な心象風景か何かなのだろうな、と思って聴いていた。叙情的な、優しい曲である。

 伊福部昭のコンチェルトは、1978年の作品。所謂「伊福部節」はそれほど出て来ないけれども、冒頭から続くヴァイオリンの長いカデンツァ風のソロの中に、次第に舞曲風の音楽が形を整えて来るあたりは、なかなか巧みな手法である。
 全曲にわたりソロ・ヴァイオリンの独り舞台ともいうべく、オーケストラはむしろ控えめなので、両者の合体による解決点がなかなか見えてこないという印象を受ける構成だが、そのソロを弾いた神尾真由子の演奏が聴きものだった。オーケストラの日本的な素朴さの上に、濃厚な色合いと強烈な表情を持ったヴァイオリンのソロが異国的な情熱で縦横無尽に乱舞するという感だ。
 神尾の衣装もすこぶる華麗だったが、演奏はそれ以上に華麗だった。これはもう、神尾の独り舞台と言ったところであろう。

 注目の貴志康一の交響曲「仏陀」(Symphony《Buddha》)は、貴志自身の指揮により1934年11月にベルリンで初演されたもの。初演時のドイツ語タイトルは「Symphonie《Das Leben Buddhas》(仏陀の生涯)だった由である。
 日本ではやっと1984年9月13日に初演の運びとなったが、その時の演奏が小松一彦の指揮する関西フィルだった。それ以降には東京都響や大阪フィル、京都フィロムジカ管、芦屋響などが取り上げているというデータがあるが、今回は関西フィルが「日本初演の立役者」を標榜して演奏したわけである。

 曲は4楽章からなり、演奏時間およそ46分という長大な交響曲。第1楽章だけで今日は18分かかった。
 第1楽章冒頭と第4楽章終結はR・シュトラウスの「アルプス交響曲」を思わせるが、そのモティーフは、ブルックナーの「第4交響曲」第1楽章第1主題と同じリズムを持っている。いや、曲全体がブルックナーの交響曲をモデルにした趣があるだろう。第2楽章にも多少その雰囲気があるし、第4楽章最後の浄化されたような、安息に満ちた終結などは、明らかにブルックナーの「7番」第2楽章の終結や、「9番」第3楽章の終結をモデルにしていることが聞き取れよう。

 こういう傾向は、作品が書かれた時代を考えればある程度は仕方がないとも言えようが、それにしても当時の日本の作曲家たち━━例えば山田耕筰にしても同様だが━━が、それら欧州の先人作曲家の作品にこうも倣わなければならぬ風潮にあったのかと、ちょっと複雑な気持になる。単なる「先輩たちへのオマージュ」で済まされる類のものではあるまい。
 第1楽章結尾がチャイコフスキーの「悲愴交響曲」第1楽章のそれとよく似ていたり、また第3楽章のスケルツォ主題がデュカの「魔法使いの弟子」のあからさまな引用だったり・・・・日本人作曲家のこういう作曲手法を、当時のベルリンの聴衆や批評家たちは、どう受け取ったのだろうか?

 「仏陀」というタイトルの標題音楽的なコンセプトは━━それについてはいろいろ解説があるようだが━━実際に音で聴いた範囲では、具体的には掴み難い。第3楽章で「魔法使いの弟子」に似た曲想が鳴り響く中に、ウッドブロックが木魚を叩くようなリズムで加わって来る個所などは、貴志のジョーク精神の為せる業だったのだろうか?

 藤岡幸夫の神経を行き届かせた指揮のもと、関西フィルが好演した。コンサートマスターとヴィオラの首席奏者の活躍を称賛しよう。意欲的で、いい演奏会だった。

コメント

仏陀

私も仏陀の公演行ってました。東条様 びわ湖ホールのパルジファルでもお見かけした気がしますが、関西の公演にもマメに足を運んでおられますね。お仕事とはいえさすがです。仏陀 初めてCDで聴いた時 第一楽章私はなぜかマーラーの復活を思い浮かべたのですが、私のみみがおかしいのでしょうか。第三楽章は私の耳にも魔法使いの弟子に聞こえました。確かにパクリと言われても仕方ない部分もありますが、当時あれだけの曲遠作曲した貴志康一は凄いと私は思います。神尾さんの足に置いていた小さな機械が気になりました。あれはバイオリンのチューナーでしょうか?

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中